『おかえりモネ』未知が百音に苦しみをぶつける 大事な人を優先してしまうことへの葛藤

『おかえりモネ』百音に苦しみぶつける未知

 自分のやりたいことか、はたまた果たすべき役割か。『おかえりモネ』(NHK総合)第103話では、永浦水産の今後を巡って家族会議が開かれ、亜哉子(鈴木京香)や未知(蒔田彩珠)が自身の思いと向き合うことになった。

 百音(清原果耶)の職場で酔いを覚ました未知が帰宅した直後、永浦家に届いた一本の電話。それは漁業の事務長からかかってきたもので、電話を取った亜哉子は龍己(藤竜也)が壊れたカキ棚を修復しないつもりであることを知る。

「俺はこの永浦水産は、俺の代で終わっていいと思ってるんだよ」

 ここのところ、ふとした瞬間に思い悩む表情を見せていた龍己。家族が新たな道に進もうとしている姿を見て、自分一人では長く家業を続けられないと覚った龍己は耕治(内野聖陽)にだけ、残った棚だけでやっていく意向を伝えていた。

 そんな龍己の言葉を聞き、すかさず声を挙げたのは未知だ。東京の大学からうちで研究に専念しないかと打診されている未知は、自分の将来について思い悩んでいたはず。それなのに「私が継ぐよ」という言葉には不思議と迷いがない。これはどういうことか。

 さらに続けて、民宿再開に向けて動き出した亜哉子も「カキの養殖、私が続けます」と名乗り出る。そんな姿を見て、そうか、やっぱり二人は性格こそ似てないけれど親子なんだなと実感した。

「みーちゃん、あんた。研究が好きだろ」
「亜哉子さんは子どもに関わる仕事がしたいんじゃないのか?」

 そう龍己が指摘したように、未知にも亜哉子にも、それぞれ自覚していない“夢”がある。未知は百音が島を出てから、自分が家族を支えなきゃという一心で水産業に携わってきたが、その中で最も興味を持ったのは養殖の研究だった。学会やセミナーで研究を発表している未知の表情はどんな時よりも生き生きと輝いていて、ちゃんと評価もされている。大学から直接オファーがくるなんて、そうそうないことだ。

 一方、民宿再開の先に亜哉子が思い描いていたのは、尊敬する雅代(竹下景子)も力を入れていた“島の里親制度”。夏休みの間、学校や家庭に馴染めない子どもを民宿で預かり島の暮らしを体験してもらうことで、ひととき心を休ませる亀島ならではの制度だ。ふと震災で傷ついた百音に自然と向き合う場所を与えた登米のサヤカ(夏木マリ)の家や、社会の荒波に揉まれ部屋から出られなくなった宇田川さんをはじめ、住民をそっと見守る菜津(マイコ)のシェアハウスを思い出した。話したくないことは無理に話さなくていい。ただ、付かず離れずの距離で一人ひとりが自分の気持ちとゆっくり向き合える場所をつくる。普段から百音の幼なじみたちを、まるで自分の子どものように受け入れる亜哉子がやりたかったのはそういうことかもしれない。

 だけど未知も亜哉子も、そんな自分の思いよりも大事な人の気持ちを優先してしまう。百音や耕治が迷いながらも己の道を切り開いてきた裏で、二人の夢は人知れず影を潜めてきた。どちらがいいとか、悪いとかではない。もちろん、未知や亜哉子に誰かが強制的に役割を押し付けたこともない。百音や耕治も家族の状況を鑑み、一通り悩んだ末に心の赴くまま突き進んできた。きっとその決断は生半可なものではなかっただろう。

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