『おかえりモネ』時には衝突も? 百音と幼なじみたちが示す、さまざまな選択肢
『おかえりモネ』(NHK総合)第20週、百音(清原果耶)が、地元・気仙沼に帰ってきた。これで、東京に残る明日美(恒松祐里)を除く4人の幼なじみたちが、再び故郷に集結することになる。
18歳まで本物の家族のように過ごしてきた5人が分れることになったのが、“地元を出るか? 出ないか?”問題だ。地元に残らざるを得なかった亮(永瀬廉)に対し、明日美と三生(前田航基)、悠人(高田彪我)は仙台の大学に進学。百音は、就職のために登米に引っ越した。その後、明日美は地元に戻らないという選択をしたが、三生と悠人は気仙沼で働くことを決めた。本作から“どんな生き方をしてもいい”というメッセージが伝ってくるのは、この5人が多種多様な道を選択しているからかもしれない。
まず、三生には1000年以上続くお寺を継ぐという使命がある。その道に背くため、仙台にいた頃は、金髪頭にしたりパーマをかけたりと、“髪”で反抗心を表してきた。震災が起きた日、次々と運ばれてくる遺体を目の当たりにしたことへの葛藤もあったのだろう。
そんな彼が第93話、お寺を継ぐ決意を表明するため剃髪することに。幼なじみの手によって髪を刈り取られていく最中、どんどん“大人”の顔つきになっていく三生の表情にはグッと惹き込まれた。
紆余曲折はありながらも、親の仕事を継ぐことを選んだ三生に対し、“継がなかった者”として、百音の父・耕治(内野聖陽)を置いているのがまたいい。この2人の対比には、どんな人をも否定しない安達奈緒子脚本らしさが詰まっているように感じる。
そして、1度は地元を出た4人とは異なり、ずっと島に残っているのが亮だ。母・美波(坂井真紀)が震災で亡くなり、そのショックで父・新次(浅野忠信)はアルコール依存症に陥る。そのため、当時15歳の彼は早急に“大人”になることを求められた。母の死を乗り越えられないまま、父の代わりに漁師になるしか道がなかったのだ。
意外にも、亮は5人のなかで最も未来を見ている存在だ。それはきっと、過去に縛られることの怖さを、誰よりも知っているから。第40話、「過去に縛られたままで何になるよ。ここから先の未来まで、壊されてたまるかっつーの!」と涙を流したシーンや、75話で「モネしか言える相手いない」と百音にすがった時。ふと、“子ども”に戻る表情に、いつも胸を締め付けられる。