裏切り連続の85分! ホラーアニメ『整形水』の暴走ストーリーを体感

ホラーアニメ『整形水』の暴走を体感せよ

 では、ここでいう「アニメならではの魅力」とは具体的に何か? 一例を挙げるなら、そもそも主人公のイェジが別人に変身することだ。実写でも整形手術で美男美女に変身する作品はあるが、言っても同じ人間である。作画がガラっと変わるほどのショック、周囲のモブキャラとの違和感は出せない。ここまでのギャップを出せるのはアニメならではだ。そして数々の突飛な展開が許せるのも、本作がアニメである部分が大きい。実写と絵では受ける印象が大きく異なる。たとえば佐藤健を持ってしても、三次元人の成人男性が「おろ?」と言うのは中々に工夫が必要だろう。しかし、これが和月伸宏のデフォルメ絵だと、何の問題もなく「おろ?」は口癖として成立する。本作はこうした効果を逆手にとって、実写にすると陰惨極まりないシーンや、笑ってしまう、あるいは冷めてしまうシーンを次々とブチ込んでくる。「絵が動く」ことはアニメの魅力の根幹だが、本作は「動く絵」だから成立している物語だと言っていい。少し逆説的になるが、これはこれでアニメの特性を活かしていると言える(あと単純に実写だと残酷表現で18禁になるだろう)。

 本作は人間の負の側面、欲望や嫉妬などを必要以上に掘り下げていくアニメだ。二転三転する物語を楽しむエンタメマインドに満ちた作品であり、同時に外見至上主義への痛烈な皮肉も詰まっている。決して家族そろって見に行ってほしいとは言えないが、そういうドロドロしたのが大好きな人にとっては、たまらないものがあるだろう。後半からは予想の斜め上を突っ走るため振り落とされる可能性もあるが、もしアナタが「そのウソ買った!」と物語に乗ることができたなら、最後は奇妙な爽快感を覚えるはずだ。最悪な人たちが最悪のストーリーを駆け抜ける、上映時間85分の一本勝負。是非、体感してみてほしい。

■公開情報
『整形水』
9月23日(木・祝)全国公開
原作:オ・ソンデ(LINEマンガ『奇々怪々』内「整形水」)
監督:チョ・ギョンフン
提供:トムス・エンタテインメント
配給:トムス・エンタテインメント/エスピーオー
2020年/韓国/85分/カラー/ビスタ/5.1ch/英題:Beauty Water/翻訳:小西朋子/PG12
(c)2020 SS Animent Inc. & Studio Animal &SBA. All rights reserved.
公式サイト:seikeisui.jp
公式Twitter:@seikeisui

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