『うみべの女の子』『猿楽町で会いましょう』 話題作の主演続く石川瑠華の“表情”に注目

話題作の主演相次ぐ女優・石川瑠華の魅力

軽妙なポップさは恋愛ドラマ向き?

『猿楽町で会いましょう』(c)2019オフィスクレッシェンド

 繰り返しになるが、“表情の無限のバリエーション”というのが何よりも石川瑠華の真摯さと演技力の高さを証明するものになっていると思う。6月に公開された『猿楽町で会いましょう』もまた、彼女の表情の変化に振り回される映画だった。

 金子大地演じるフォトグラファー・小山田と石川瑠華演じる読者モデル・ユカの恋愛を描いた本作は、『花束みたいな恋をした』よりいくらか性格の悪さが前景化した若者たちの、正面衝突する心の動きを捉える。しかし彼女たちを観て「性格が悪い」と断罪できないのは、どこまでも無我夢中であり、それゆえに空っぽであり、しかしどうしようもなく生きているからだった。石川瑠華が演じると、ひとつの言葉で役を語ることができなくなる多面性を帯びる。

『猿楽町で会いましょう』(c)2019オフィスクレッシェンド

 2021年の夏に上記の2作で注目を集める石川瑠華は今後もネクストブレイクの街道を突き進むだろうが、そこで注目しておきたいのは彼女が軽妙なポップさを装備していることだ。

第1話「これってカタモク?」【水曜日22時だけの彼】

 YouTubeドラマ『水曜日22時だけの彼』では、毎週水曜日に家へやってくる男の子に心惹かれながら「絶対に好きになってはいけない」と意地を張る女の子、ナツミを好演。彼女自身の弾みがちなナレーションも相まって、恋愛の葛藤がとてもポップに彩られていた。同様に石川瑠華がただただキュートに動き回っている作品として、U-NEXTで配信もされている『ビート・パー・MIZU』という短編映画がある。「MOOSIC LAB 2019」で上映され、最優秀女優賞を獲得した作品だ。時折発せられる「〜なのだ」という語尾が絶妙に彼女の声質とマッチしていて、動きと言葉を追っているだけで楽しい。

 こうした軽妙なポップさは、地上波の恋愛ドラマやキラキラ青春映画にもきっとぴったりハマるはず。今後は映画女優として歩みを進めるのか、それともドラマなど幅広く活躍の場を見出していくのか。いずれにしろ、私たちに忘れがたい役との出会いを届けてくれるに違いない。

■公開情報
『うみべの女の子』
新宿武蔵野館、ヒューマントラストシネマ渋谷ほか公開中
出演:石川瑠華、青木柚、前田旺志郎、中田青渚、倉悠貴、宮崎優、髙橋里恩、平井亜門、円井わん、西洋亮、高崎かなみ、村上淳
原作:浅野いにお『うみべの女の子』(太田出版<f×COMICS>)  
監督・脚本・編集:ウエダアツシ
音楽:world’s end girlfriend
挿入曲:はっぴいえんど「風をあつめて」(PONY CANYON / URC records)
制作プロダクション:スタイルジャム
制作協力:コギトワークス
配給:スタイルジャム
(c)2021『うみべの女の子』製作委員会
公式サイト:umibe-girl.jp

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