ライアン・レイノルズが続編に意欲的な『フリー・ガイ』 全米大ヒットでも劇場は苦戦?

『フリー・ガイ』ヒットも米映画館は危機?

 8月13日から日米同時公開された『フリー・ガイ』。ライアン・レイノルズが主演を務める、ゲームの中の世界が舞台のコメディ映画である本作は、週末に北米4165館での上映で2840万ドルを記録。さらに、海外興収は2250万ドルを獲得し、オープニングはトータルで約5100万ドルという結果になった。現在アメリカでもデルタ株のコロナウイルスが猛威を振るう背景を考え、関係者は国内2000万ドルでのスタート予想を立てていただけあって、想像以上のヒットとなっている。

 今年の劇場再開からのコロナ禍でのヒット作の中でも、特殊な位置付けにある『フリー・ガイ』。実は『クワイエット・プレイス 破られた沈黙』や『死霊館 悪魔のせいなら、無罪。』そして『ブラック・ウィドウ』など、大きな興収を記録した作品は続編やすでにファンダムのあるものだった。そのため、興収の数字が決して一般的に人々が映画館に戻ってきたことを意味するわけでもなかった。しかし『フリー・ガイ』は20世紀スタジオによる、オリジナルの作品。つまりこの興収結果は、ファンベースに基づいていないものとなっている。ただ、強いて言うならライアン・レイノルズというスターを求めて多くの人々が映画館に駆けつけたと言っていいだろう。

 Box Office Proのチーフ・アナリストであるショーン・ロビンスは、Variety誌に対して以下のように語っている。

「ライアン・レイノルズは『デッドプール』で大ブレイクしました。『名探偵ピカチュウ』の大ヒットも、彼が声優を務めている点が大きな勝因でしょう。あれが今回の『フリー・ガイ』のヒットにも繋がり、特にビデオゲームファンの人気を獲得しています」

 またExhibitor Relationsの業界アナリストであるジェフ・ボックは、今回の興収について、「同時公開の『ザ・スーサイド・スクワッド “極”悪党、集結』に対して、より一般的な観客向けの、明るくて気楽な夏休み映画であることも大きいです」と語る。45日間のシアトリカルウィンドウにより劇場のみで公開をスタートしたことが、数百万ドルほど効果に表れていると分析した。

 このヒットを受けて、ディズニーはすでに続編の計画を練っている。それについて聞かされたライアン・レイノルズは、その喜びをTwitter上で表していた。ところが、製作側は嬉しいニュースばかりなのに対し、映画館側は大きな問題に直面していた。

 コロナ禍でありながらも、これまで興行収入は順調に回復気味であり、これまでのヒット作は『ブラック・ウィドウ』(1億7800万ドル)、『ワイルド・スピード/ジェットブレイク』(1億7200万ドル)、『クワイエット・プレイス 破られた沈黙』(1億5900万ドル)、『ゴジラvsコング』(1億ドル)などがあった。ただ、これらの映画は18歳から35歳までに訴求した映画と考えられ、『フリー・ガイ』の週末チケット購入者も59%が男性、80%近くが18歳以上という結果が出ている。そしてこの時期、映画館にとって最も稼げるサマーブロックバスター映画とは、ファミリー向けのものなのだ。なぜなら、コンセッション(ポップコーンなどの売店販売)の売り上げが桁違いに上がるから。

 ボックはこれについて、「『フリー・ガイ』のオープニング興収は劇場にとって良い成績を出したと思われがちですが、観客はほとんどが独身男性です。彼らは家族客に比べてコンセッションにあまりお金を使いません」とコメント。実は家族連れが映画館に訪れられない理由として、12歳未満の子供がワクチン接種を受けられないという事実がある。家族向け映画としてディズニーの『ジャングル・クルーズ』が公開されていたが、現在の全体興収は8800万ドルと伸び悩んでいる。加えて同時期に公開された『スペース・プレイヤーズ』や『ボス・ベイビー ファミリー・ミッション』など、比較的若年層に訴求した作品も同様に、どちらも北米で7000万ドルにも達していない。

 どれだけ興収が良くても、劇場への利益分配は限られてくる。そういった点で、やはり100%の収入となるコンセッションが重要となってくるのだ。ボックは「劇場は現在不安定です。ある週では稼ぎ、ある週では振るわない。劇場に家族連れが戻るまで、苦労することになるでしょう」とコメントを残した。

(参照:‘Free Guy’ Beat Box Office Expectations, but Movie Theaters Still Have a Big Problem

■公開情報
『フリー・ガイ』
全国公開中
監督:ショーン・レヴィ
出演:ライアン・レイノルズ、ジョディ・カマー、ジョー・キーリー、タイカ・ワイティティほか
配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン
(c)2021 Twentieth Century Fox Film Corporation. All Rights Reserved.
公式サイト:movies.co.jp/FreeGuy

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