『白い砂のアクアトープ』なぜ“お仕事アニメ”として評判に? 心の再生描くドラマの魅力

 本作には、P.A.WORKSが2018年に制作したテレビアニメ『色づく世界の明日から』(毎日放送ほか)のメインスタッフが多く参加している。『色づく世界の明日から』は、幼い頃に色彩感覚を失くして心を閉ざしていた主人公が、同世代の友人たちと部活の中で恋愛や友情をはぐくみ、魔法というファンタジー要素を絡めながら色が見えるようになるまでの救済のドラマである。60年前に時間遡行して若かりし祖母と過ごし、青春を満喫して主人公の心が解放されるまでを、瑞々しいタッチで描いた篠原監督が、最新作『白い砂のアクアトープ』でどんなアプローチを見せるのか興味は尽きない。

 アイドルの事務所をクビになり、逃げるように沖縄にやってきた風花は、どこか心に陰りがある少女だった。しかし逃げた先の水族館で、夢を追う誰かの手助けなら、まだ自分にもやれるはずだと前向きな考えに至る。夢を諦めてしまった自分だからこそ、夢を諦めない、諦めたくない気持ちが強く分かる。篠原監督が『色づく世界の明日から』で挑戦した、傷ついた少女の心の再生というテーマがここにも見えてくる。第5話で風花の母が、実家に連れ帰ろうと水族館を訪ねてくるエピソードが描かれたが、「どうして水族館なの?」と聞く母親に、風花はまだ「分からない……」と答える。大事な水族館を潰したくない、再起に賭けたいというくくるの夢を応援する中で、風花にとっての自分の夢は見えてくるのか。そして風花とくくるを取り巻くキャラクターが、2人にどのように絡んでくるのか、ドラマはどう広がってゆくのか。『白い砂のアクアトープ』の物語はまだ始まったばかりだ。多くのテレビアニメが1クール(3カ月)で終了する中、本作はBlu-rayが全6巻でリリース、すなわち2クールと報じられているので、じっくりと2人の成長を描いてくれそうだ。篠原監督以下、スタッフの手腕に期待したい。

■放送情報
『白い砂のアクアトープ』
TOKYO MXほかにて、毎週木曜24:00〜放送
原作:projectティンガーラ
監督:篠原俊哉
声の出演:伊藤美来、逢田梨香子、和氣あず未、Lynn、土屋神葉、阿座上洋平ほか
キャラクター原案:U35
シリーズ構成:柿原優子
キャラクターデザイン、総作画監督:秋山有希
美術監督:鈴木くるみ
色彩設計:中野尚美
音楽:出羽良彰
アニメーション制作:P.A.WORKS
(c)projectティンガーラ
公式サイト:https://aquatope-anime.com/
公式Twitter:@aquatope_anime

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