西島秀俊主演『シェフは名探偵』“和解”の最終回に 濱田岳らビストロメンバーが残した功績

『シェフは名探偵』濱田岳らが残した功績

「お父さんはすでに歩み寄っていた。あとはあなたがお父さんに歩み寄れば良い」

 西島秀俊主演ドラマ『シェフは名探偵』(テレビ東京系)が最終話を迎えた。

 天才シェフ三舟忍(西島秀俊)率いる個性豊かなビストロメンバーが揃い、グルメながら一癖ある客が吸い寄せられるようにやって来る「ビストロ・パ・マル」に流れる何とも心地良い時間の正体は何なのだろう? と考えていた。

 「ビストロ・パ・マル」には人知れず抱えて来た傷や痛みをそっと静かに受け入れ、癒してくれる、客にとっても彼らビストロメンバーにとってもそんな「再生」の時間が漂っていたように思う。様々な人の大切にしたい思い出や“誰かが誰かを想う気持ち”がそこら中に浮遊していた。

 失踪中の父親を探す三舟はようやく父親の生存確認ができたのにもかかわらず当初再会を断られていたし、ギャルソンの高築(濱田岳)はそもそも会社をクビになり再訪したビストロで三舟に声を掛けられここで再起することになったのだった。そういえば、スーシェフ(副料理長)の志村(神尾佑)には離婚危機があったし、ソムリエの金子(石井杏奈)は同性愛者であり彼女との別れに傷つく様子が描かれた。そう、全員何かに破れ、何かに傷ついていた。

 皆、日頃辛いことやわだかまりを抱えながらも仕事には行かねばならないし、生活を全てストップさせてしまうわけにはいかない。傷ついていない振りをしながら、何食わぬ顔をしながら、あるいは時にその感情に蓋をしながらも日々の生活をどうにか営んでいるのだ。

 そんな鬱憤を晴らすために、あるいは日々のストレスから逃れるために、束の間の解放を求めて人は1人で、あるいは友と、仕事仲間と食事に出かける。

 最終話のテーマは「和解」。三舟親子の再会が遂に実現した。父・英雄(吉澤健)から料理を教わる三舟の姿に得も言われぬ静かな感激が漂っていた。「厨房に立つ覚悟や強さ」を父親から学んだと感謝を伝えられた三舟も、息子が作った料理に「パ・マル。素晴らしい。私なんかとっくに超えてるよ」と伝えられた父親も互いに不要な肩の荷を降ろせたことだろう。「お前の中の料理人としての志が高いから」だとする父親に、三舟がすかさず答える「それは親父が俺の父親だからだよ」で、彼ら2人は完全に和解した。

 初めて三舟が作った料理にも笑顔を見せず「パ・マル(悪くない)」とこぼした父親だったが、後に本場フランスでは「パ・マル」とは「とても良い」という賛辞だったことがわかる。父親は自分の姿を見てシェフを志した三舟の将来に責任を感じてより厳しく指導したと明かしていたが、“それが間違っていなかった”と当時から一人込み上げるものがあったのだろう。そして息子はシェフとして十分やっていけるとその頃から確信していたのではないだろうか。

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