日本での新作公開は25年ぶり アレクサンダー・ロックウェル監督作『スウィート・シング』
アレクサンダー・ロックウェル監督の新作『Sweet Thing(原題)』が、『スウィート・シング』の邦題で10月29日より全国順次公開されることが決定した。
スティーヴ・ブシェミ、シーモア・カッセル主演の『イン・ザ・スープ』(1992年)やクエンティン・タランティーノ、ロバート・ロドリゲスらと共同監督を務めた『フォー・ルームス』(1995年)などを手がけ、ジム・ジャームッシュと並んで米インディーズ映画のアイコンとして知られるロックウェル。彼の日本での最後の劇場公開作は、1995年の『フォー・ルームス』だが、その後もブシェミとジェニファー・ビールス共演の『13 rooms』(2002年)や日本では配信のみの『ピート・スモールズは死んだ!』(2010年)など人気作はあったものの日本公開されなかった。ロックウェル自身がニューヨーク大学で教鞭をとっていることもあり寡作になり、本作は待望の新作となっている。
舞台はマサチューセッツ州・ニューベッドフォード。普段は優しいが酒のトラブルが尽きない父アダムと暮らす、少女ビリーと弟ニコ。ある日、父アダムが強制的な入院措置となり、身寄りのないビリーとニコは、家を出て行った母親イヴのもとへ行くのだが......。子どもたちの、悲しいけれどどこか希望に満ちた、ひとときの冒険が始まる。
一貫してインディーズにこだわり続けてきたロックウェル監督が本作で描くのは、親に頼ることができず、自分たちで成⻑していかなくてはならない15歳の少女と11歳の少年の物語。子育てができない親たちという現代社会の問題を描き、映像は16ミリフィルムで撮影され、モノクロとパートカラーで展開される。
姉ビリー役をラナ・ロックウェル、弟ビリー役をニコ・ロックウェルと、監督の実の子どもたちがメインキャストを演じ、監督の実際のパートナーであるカリン・パーソンズが母親イヴ、『イン・ザ・スープ』からの盟友で、近年は『ミナリ』にも出演したウィル・パットンが父親アダムを演じた。また、タイトルにもなっているヴァン・モリソンの「Sweet Thing」やビリー・ホリディの楽曲が使用され、テレンス・マリック『地獄の逃避行』(1973年)のサウンドトラックの引用も。
なお本作は、2020年2月に第70回ベルリン国際映画祭ジェネレーション部門にてワールドプレミア上映され、最優秀作品賞を受賞。2020年の第33回東京国際映画祭でも『愛しい存在』というタイトルで上映された。
■公開情報
『スウィート・シング』
10月29日(金)より、ヒューマントラスト渋谷、新宿シネマカリテ、アップリンク吉祥寺ほかにて全国順次公開
監督・脚本:アレクサンダー・ロックウェル
配給:ムヴィオラ
2020年/アメリカ/91分/DCP/モノクロ+パートカラー/原題:Sweet Thing