『サイダーのように言葉が湧き上がる』の80's感の由来は? 世代にドンピシャの起用の数々

『サイコト』の80年代テイストの由来を分析

 また劇中歌「YAMAZAKURA」を、⼤貫妙⼦が手がけていることも、この世代にはたまらない。大貫と言えばシュガー・ベイブのボーカルとして「DOWN TOWN」を歌っていたのが鮮烈だった。同曲はのちにEPOがカバーして、80年代の伝説的お笑い番組『オレたちひょうきん族』(フジテレビ系)のエンディングテーマとして一世を風靡した。大貫の当時の楽曲が海外でも評価されていて、『YOUは何しに日本へ?』(テレビ東京系)では、大貫の幻のレコードを求めてイギリスから来日したYOUに密着した様子が放送されたこともあった。イシグロ監督も学生時代から大貫のファンだったそうで、大貫の曲を聴きながら絵コンテを描いたそう(参照:映画「サイダーのように言葉が湧き上がる」大貫妙子やネバヤンに彩られた青春作をイシグロキョウヘイが語る|Mikiki)。同曲は物語の重要なキーとして、フジヤマ老人の思い出の曲として使われている。

 かつて夢を追いかけた人。夢を諦めた人。否が応でも時代はどんどん移り変わり、ふと気付けば新しい世代が次々と台頭している。夢は次の世代に引き継がれ、またそこから新しいストーリーが生まれる。その世代を繋ぐキーワードのような存在。単なる懐古趣味でもレトロブームでもなく、40〜50代の胸の内に広がる風景と思い出が、今という時代と共鳴して生まれた。それが『サイダーのように言葉が湧き上がる』だ。

■公開情報
『サイダーのように言葉が湧き上がる』
全国公開中
出演:市川染五郎、杉咲花、潘めぐみ、花江夏樹、梅原裕一郎、中島愛、諸星すみれ、神谷浩史、坂本真綾、山寺宏一
原作:フライングドッグ
監督:イシグロキョウヘイ
脚本:佐藤大
キャラクターデザイン:愛敬由紀子
音楽:牛尾憲輔
アニメーション制作:シグナル・エムディ×サブリメイション
製作:『サイダーのように言葉が湧き上がる』製作委員会
配給:松竹
(c)2020フライングドッグ/サイダーのように言葉が湧き上がる製作委員会 (c)KAZUMI KURIGAMI
公式サイト:cider-kotoba.jp
公式Twitter:@CiderKotoba

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