青春ドラマの傑作『六番目の小夜子』が深夜に蘇る 山田孝之、栗山千明の中学生役にも注目

深夜に蘇る『六番目の小夜子』

 原作では高校生の物語だった『六番目の小夜子』だが、ドラマ化に際して中学生の物語に変更されている。また小説には登場しない潮田玲という快活な少女を主人公にするという大胆な脚色が加えられている。

 ここまで変えてしまうと、別の話ではないかと思われる方も多いかもしれない。実際、小説にあった暗鬱とした空気は薄まっていて細部も微妙に違うのだが、奥底にある「学校とは何か?」というテーマはしっかりと受け継がれている。

 木皿泉が脚本を手掛けた『野ブタ。をプロデュース』(日本テレビ系)もそうだったが、歴史に残る学園ドラマは、その時代を生きる少年少女内面を描くと同時に、学校という空間を作り手が独自の解釈で捉え直している。

 『六番目の小夜子』はその筆頭であり、玲たちが「サヨコ伝説」について調べる姿を追いかけていると「学校とはなにか?」と視聴者自身もまた、考えさせられる構造となっている。

 本作で描かれる学校は「身近な異界」という手触りだが、この感触は大人の方が理解できるのかもしれない。

 卒業して何年も経つ大人の視点で振り返ると、学校はとても不思議な場所だったと思う。学校は「社会のルール」を学ぶ公共の場で、学生にとっては家庭の次に身近な「日常そのもの」と言える場所だ。しかし、建物としての学校は神社やお寺といった宗教施設のようで、大人になってから敷地に入ると、何かに見られているような気配を感じて、とても緊張する。

 『六番目の小夜子』を読んでいて強く感じるのは、学校という空間が持つ不可思議な気配である。その独自の雰囲気を映像化することにドラマ版はもっとも力を入れている。その意味で本作の裏の主人公は「学校」そのものだと言えるのかもしれない。

 現役の学生が観てもすでに卒業して何年も経つ大人が観ても、何か感じるものがあるドラマだと思う。深夜に蘇る「サヨコ伝説」。是非とも堪能いただきたい。

■放送情報
『六番目の小夜子』
NHK総合にて放送
第1回〜第3回:7月31日(土)0:11〜1:38 
第4回〜第8回:8月1日(日)0:36〜3:03 
第9回〜第12回:8月2日(月)0:36〜2:34
※放送時間は変更になる場合あり
NHK+にて放送から1週間見逃し配信中
原作:恩田陸『六番目の小夜子』
脚本:宮村優子
出演:鈴木杏、栗山千明、山田孝之、村田雄浩、多岐川裕美、美保純、上杉祥三、冨士眞奈美、勝地涼、松本まりか、山崎育三郎、伊藤隆大、一色紗英、古尾谷雅人ほか
写真提供=NHK
公式サイト:https://www.nhk.jp/p/ts/YLVZ5L91N8/

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