アニメ『チェンソーマン』でも話題に ヒット作続出の制作スタジオ「MAPPA」とは?
『週刊少年ジャンプ』(集英社刊)連載のダークヒーローアクション漫画『チェンソーマン』のアニメ化が2020年末に報じられ、原作ファンが大いに沸き立ったことは記憶に新しいが、アニメ化にあたっての制作スタジオがMAPPAということで、アニメファンからも大きな注目を集めた。
それから半年後の2021年6月にアニメ版『チェンソーマン』のティザーPVが解禁されたが、YouTubeのMAPPA公式チャンネルにUPされたPVの再生回数はすでに750万回を超えて、国内外のファンから期待を寄せるコメントが多く書き込まれている。まだ詳細を明らかにしないティザーPVならではのじらし手法で、人物の台詞などは一切入っていないが、原作を読んだことのない人ですら興味を惹かれる緻密な作画と迫力あるアクションが詰め込まれ、放送が待ち遠しくなるような60秒ほどの映像である。今回、『チェンソーマン』をきっかけにアニメ制作会社MAPPAに興味を持った人に、そもそもMAPPAとはどんなアニメ会社なのかを大まかに説いていきたい。
MAPPAとは、アニメ制作会社マッドハウスの取締役社長だった丸山正雄が、同社を退職したあと設立した会社の名前である。丸山正雄はマッドハウス時代に、『PERFECT BLUE』(1997年)、『千年女優』(2002年)をはじめとする今敏監督の一連の劇場用アニメや、細田守監督の『時をかける少女』(2006年)、『サマーウォーズ』(2009年)、片渕須直監督の『マイマイ新子と千年の魔法』(2009年)といった今をときめくヒットメーカーたちの代表作を企画・プロデュースしてきた人物だ。余談だが、アニメ業界の内幕を描いたテレビアニメ『SHIROBAKO』(2014年)に登場する、架空のアニメスタジオ“武蔵野アニメーション”の丸川正人社長は、丸山がモデルになっている。
MAPPA創業後の丸山が企画した片渕須直監督のアニメ映画『この世界の片隅に』(2016年)は、日本での大ヒットを受けて世界各国でも上映され、数々の映画賞に輝いた名作だ。割とぼーっとした呑気な性格の主人公・すずが、戦下の畑でうずくまって落涙するシーンは、普段のすずとのギャップを感じさせるとともに、彼女のような陽気な性格の人をここまで追いやる戦時の悲惨さがよく表れている名シーンである。
MAPPAは、Cygames(サイゲームス)が開発したソーシャルゲームを原作としたテレビアニメ『神撃のバハムート GENESIS』(2014年)で、毎週放送のテレビ向け作品と思えないような劇場アニメ級のクオリティを維持して視聴者の度肝を抜き、男子フィギュアスケート界を舞台にした『ユーリ!!! on ICE』(2016年)は作画の美麗さと物語の面白さを兼ね備えて女性視聴者の支持を集めた。また、コアなファン層に支えられていた雨宮慶太監督の実写特撮ヒーロー『牙狼〈GARO〉』シリーズ(2005年~2020年)を『牙狼〈GARO〉-炎の刻印-』(2014年)のタイトルでテレビアニメ化し、その続編及び劇場版を成功させた実績もある。浜辺美波と高杉真宙が出演し、実写ドラマ2作と劇場版2作が制作された『賭ケグルイ』も、MAPPA制作のテレビアニメ版(2017年)の好評ぶりが背景にあったればこそだろう。賭け事がテーマの『賭ケグルイ』では、主人公・蛇喰夢子とライバルたちがギャンブル勝負の最中に見せる、一種の変顔的な特異な表情が、原作漫画のテイストを再現して上手くアニメ化されていた。