『ボイスII』増田貴久演じる石川が受けた新たな傷 “白塗り野郎”の目的と正体は?

『ボイスII』増田貴久が受けた新たな傷

 「音」を手がかりに捜査を進め、音を可視化した作品であるから、気付けば観ているこちらも耳をすませ、物音を立てないよう身を固くしてしまう。毎回、コマーシャルのタイミングでようやく深呼吸だ。『ボイスII 110緊急指令室』(日本テレビ系)第2話では、直近の凶悪事件に“白塗り野郎”が関連している可能性が浮上。第1話で発生した市役所立てこもり事件の犯人・堀部(山田百次)と接見した樋口(唐沢寿明)は「憎しみを持つ者の心に火をつけ、一線を越えさせること」が白塗り野郎の目的だと察する。

 とはいえ白塗り野郎は、大樹(鳥越壮真)を心身ともに傷付けることで自ら樋口の心に憎しみの種を蒔いている。重藤(増田昇太)を残忍な方法で死に至らしめ、橘(真木よう子)の心にも憎しみが生まれたことだろう。自身への憎しみを植え付ける、その目的は何だろうか。

 一方で重藤の兄は、亡き弟のポストを引き継ぐ樋口に憎しみをぶつける。その思いは分からないでもない。複雑かつ巧妙な罠が仕掛けられた第1話。さらに樋口には「息子か重藤か」という選択までのしかかった。「もしも何かが違えば、結果は変わったのだろうか」、あるいは「重藤が狙われた理由は、樋口に関係しているのではないか」ーー白塗り野郎は、周囲の樋口に対する疑念や憎しみも、同時に植え付けているように感じる。

 一度、憎しみに火がつけば、人は一線を越えてしまう。かつて自分を恐怖へと陥れた犯人・塚田(中山求一郎)を逮捕させたいがために虚報を行った薫(花岡すみれ)や、薫を守りたい一心で迷いなく包丁を握った父(坂田聡)のように。樋口の言葉どおり、父は薫の虚報を口実に塚田を殺害したかったのかもしれない。けれど「生存者」である薫と、その家族の長年の苦しみを思えば、武田家を責めることなど出来るはずがない。

 もちろん、悲しみや憎しみ、恐怖や傷を与えられた相手にならば仕返しをしてもいいというわけではない。ただ本案件のように、想像もつかないほどの苦しみと葛藤の末に起こる事件も少なくないなかで、塚田のように性懲りもなく罪を繰り返す者もいる。樋口の言葉も、捨て身で乗り込んできた薫の父の姿も、きっと支援員の存在も、何一つ響いてはいないだろう。

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