『おかえりモネ』サヤカさんからの「行きなさい/生きなさい」 百音と菅波の未来への決断

『おかえりモネ』百音と菅波の未来への決断

 ついに、百音(清原果耶)が新たな人生に向かって新たな一歩を踏み出そうとしている。その背中を押したのは、他の誰でもないサヤカ(夏木マリ)だった。

 『おかえりモネ』(NHK総合)第43話で試験合格の結果をわざと隠した百音に対して、「馬鹿にしないでね」と、笑いながらもきつい一言を残して去っていったサヤカ。そんな彼女にしっかり本音で話すため、彼女が舞を踊る舞台に百音は足を運ぶ。

 思えば百音はサヤカの家にお世話になって数年にもなるのに、未だに「サヤカさん」と呼んだり、話し方に緊張感があったり、まだ“祖父の知り合いの人”みたいな距離感があった。しかし、サヤカの感じ方は違う。百音が森林組合で働き始めた頃から、今日に至るまでの成長を見守ってきた、もう一人の“親”なのだ。だからこそ、実の子供(孫)のように自分の心配なんかせず、ただ家を飛び出してほしかったのだろう。百音が自分の家族にそうしたように。

 第44話では、そんなサヤカの気持ちと、百音の気づき、それを見守る菅波の想いが交差する。

 自分の元にやってきた百音に向かってサヤカは、「舞を舞うことは能では物事の陰と陽を整えるイメージ」だと話し始める。陰陽のバランスが悪ければ、世界全体も不安定になると。これを聞いた百音は、すぐに気象の低気圧と高気圧になぞらえて理解した。全ては、バランスなのだ。そしてサヤカは、こんなふうに気持ちを吐露する。

「甘やかしすぎるとダメ人間になる。百音のことではなく、私のこと。年寄りは甘やかすと途端に弱くなるから下手に情けなんてかけなくていい。私は一人で生きてきた。これからもそう生きていく。だから強いの。あんたに心配される筋合いはない」

 そう伝え切ると、笑いながら「行きなさい」と百音に言うサヤカ。自分の思う方へ、“生きなさい”。彼女は笑っているのに、裾で涙をぬぐっている。一見、単純に自分のことを気に掛ける百音の背中を押しているシーンだが、実はサヤカもサヤカで、本音を言うのが怖いんだなと思った。なぜサヤカは舞を踊っていたのか。それは、彼女がこれまでも人前で行ってきた一つの“誇れる強い姿”であると同時に、少し不安定になってしまった自分の気持ちを整えていたからだ。それが意味することは、やはりサヤカも本当は心のどこかで百音に行ってほしくないという寂しさと、自分を気遣って残ろうとする彼女に甘えてしまいそうになった気持ちがあったのではないか、ということ。先の言葉も、そんな自分に言い聞かせていいたのかもしれない。そして、その気持ちが整ったことを表すかのように、雨が降ってきた。

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