“伝説の反逆者”を改めて映画化した理由とは? ジャスティン・カーゼル監督に聞く
「芸術的、創造的な面での真実を映画で追求したい」
ーービジュアル的にも、クライマックスのケリー・ギャングと警官隊の対決シーンで取り入れられたゲーム的な一人称視点だったり、発行した白いシルエット、光の点滅など、強いこだわりを感じました。演出や撮影においてはどのようなことを意識しましたか?
カーゼル:クライマックスのシーンは、ネッド・ケリーの心理状態を観客に体感してもらうような作りにしました。ちょっと熱に浮かされたような、電光が走っているような極度の興奮状態、アドレナリンがマックスに出ているイメージですね。それから彼の中にある被害妄想が全て表現されています。“警官たちから見たケリーたち”のような、ありがちな対決の構図ではなく、鉄のヘルメットを被ったケリーの囚われた心理状態を、映画を観ている人にも体感してもらいたいと思ったんです。
ーー前作の『アサシンクリード』や『マクベス』もそうでしたが、奇しくも世界中の多くの人が知っている人物やキャラクターを題材にした映画が続いていますね。
カーゼル:確かにそうですね。最近撮り終えたばかりの作品も、オーストラリアで実際にあった、ある悲劇をドラマ化した実話ベースの作品なんです。そういった作品を手がけるときに意識していることは、常に距離を置いて描くこと。特別な思いを入れたり、何か穿った見方をするのではなく、実在した人を客観的に描きつつも、ある意味実在した人ではないような、キャラクターとして描く、という部分があります。改めて考えてみると、少し奇妙で、特別な作業ではありますね。私の長編デビュー作『スノータウン』で、殺人を犯した主人公を俳優を使って描くという作業は、とても難しいことでした。今回の『トゥルー・ヒストリー・オブ・ザ・ケリー・ギャング』でも一緒にコラボした脚本のショーン・グラントとセリフを考える中で、結局実在した人の言葉ではなく、実在の人物にインスパイアされた言葉を選びました。実際に事件があった場所からインスピレーションを得ることも多いですね。そう考えると、「ではドキュメンタリーはリアルなのか」という問題に直面しますが、私はそうは思いません。ドキュメンタリーにも作り手の考えが反映されますし、いろいろな条件によって描写されていくものです。映画にする時点で全てが人工的である、というのは否めないことです。ただ、そんな中で、芸術作品である部分での真実を突き詰めたいという意欲が私にはあるんです。そういう意味で、私自身は映画作家として、芸術的、創造的な面での真実を映画で追求したいと思っています。
■公開情報
『トゥルー・ヒストリー・オブ・ザ・ケリー・ギャング』
6月18日(金)より、渋谷ホワイトシネクイント、新宿シネマカリテほか全国順次ロードショー
監督・製作:ジャスティン・カーゼル
脚本:ショーン・グラント
原作:ピーター・ケアリー
製作:リズ・ワッツ、ハル・ヴォーゲル
撮影:アリ・ウェグナー
音楽:ジェド・カーゼル
出演:ジョージ・マッケイ、ニコラス・ホルト、ラッセル・クロウ、チャーリー・ハナム、エシー・デイヴィス、ショーン・キーナン、アール・ケイヴ、トーマシン・マッケンジー
配給:アット エンタテインメント
後援:オーストラリア大使館
2019年/オーストラリア=イギリス=フランス/英語/125分/ビスタサイズ/原題:True History of the Kelly Gang/PG-12
(c)PUNK SPIRIT HOLDINGS PTY LTD, CHANNEL FOUR TELEVISION CORPORATION, ASIA FILM INVESTMENT GROUP LTD AND SCREEN AUSTRALIA 2019
公式サイト:kellygangjp.com