『桜の塔』最終回は鮮やかな伏線回収劇に 視聴者にも問いかけられた「正義とはなんだ?」

『桜の塔』最終回は鮮やかな伏線回収劇に

 あまりにも鮮やかな伏線回収劇に、途中から空いた口が塞がらなかった。

 『3年A組 ―今から皆さんは、人質です―』(日本テレビ系)や『ニッポンノワール ー刑事Yの反乱ー』(日本テレビ系)を手がけてきた武藤将吾が今回、脚本を手がけたドラマ『桜の塔』(テレビ朝日系)。考察合戦が激化した前作『ニッポンノワール』に比べ、目立った推理が続出しなかったのは、一つに漣(玉木宏)と千堂(椎名桔平)という象徴的な敵対関係があったからかもしれないが、そのバトルに並行してあらゆる布石が第1話からゆっくりと置かれていたことには驚いた。

 ここで全ての伏線を解説するのはあまりにも複雑かつ無謀であるため控えるが、漣の「五カ年計画」とも呼ぶべき壮大な復讐劇の中で、キーマンにいたのは妻であり千堂の娘・優愛(仲里依紗)である。刈谷(橋本じゅん)を射殺し、最終的に千堂を追い詰めるチェックメイトとなった漣にとっての言わば「駒」。彼女と結婚したのも、漣が日々の日記を綴っていたのも、全ては優愛をマインドコントロールするため(実際には優愛が自分の意思で起こした行動であるが結果的には変わらない)。

 勇仁(岡部たかし)の墓の横に改造銃を埋めた5年前から計画は進行していたのだ。第8話の冒頭にもあった漣が優愛に何かをつぶやいていたシーンの答え合わせは、「俺に協力してほしい。刈谷を殺す」という決定的な一言。最終回の前半は漣の華麗な一本背負いを含めた、千堂への逆襲劇とその裏に黒幕として矢上(尾美としのり)がいたことが明らかになり、ゲームセットとなる。

 そして、悪魔に魂を売り「サッチョウの悪魔」となった漣に立ち向かうのが爽(広末涼子)。爽が漣に拳銃を向けた第2話と全く同じ対峙となるのだ。前回は「撃って俺を楽にしてくれ」と漣が爽を煽ってみせるが、彼女が持っていた拳銃からは空砲が鳴った。「あんたの信じた道は間違ってる。あんたを裁けるのは私しかいないでしょ」ーーそう言って爽は拳銃の引き金を引く。弾は漣の左胸に命中するが、忍ばせていたスキットルが彼の命を救う。サッチョウの悪魔は死に、上條漣だけが生き残った。そこには恋仲や幼なじみといった仲を超えた、漣と爽にしか築けない特異な関係性があった。

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