『賭ケグルイ』なぜ俳優の飛躍のきっかけに? 浜辺美波、高杉真宙らの3年間を振り返る

『賭ケグルイ』俳優の3年間を振り返る

 とりわけ浜辺が本作を通してコミック的なキャラクター性を獲得し、一気に“大物感”を醸しだすようになったことは最大の収穫ではないだろうか。ドラマ版からメガホンを取り続けている英勉監督の作品群は、いかにして原作の世界観を忠実に再現させるかにこだわったものばかりだ。そしてそれと同時に、その大部分をキャストに委ねている印象が極めて強い。『ヒロイン失格』で桐谷美玲に典型的少女漫画ヒロインの持つ甘さを排除したスラップスティック性を与えたことに代表されるように、『あさひなぐ』や『映像研には手を出すな!』では既存のイメージが確立されているアイドルに新たな表情を与える。もっぱら俳優たちを原作世界に溶け込ませるためにとことんデフォルメされた“振り切った”演技を要求し、それを違和感なく落とし込めるだけの演出があってこその所業だ。

 現に『賭ケグルイ』出演者たちのその後の活躍を辿れば、“振り切った”演技が奏功していることがわかる。『今日から俺は!!』(日本テレビ系)での愛嬌たっぷりの腰巾着ぶりがサマになった矢本悠馬を筆頭に、岡本夏美と松田るかは『BACK STREET GIRLS -ゴクドルズ-』で、中村ゆりかは『女子高生の無駄づかい』(テレビ朝日系)でコミック的キャラクターを体現。また生徒会長の桃喰綺羅莉役を演じた池田エライザは『貞子』で主演を張るなど、デフォルメされた大きなアクトが必要となるタイプの作品で花開く。いずれのキャストも、『賭ケグルイ』以前から作品に恵まれていたとはいえ、一気に殻を破った印象だ。

 現在公開中の映画で、主人公たちの前に立ちはだかる視鬼神真玄役を演じるジャニーズWESTの藤井流星、ドラマ版とは別の役柄で大変身を遂げた中川大志。さらにはAmazon Prime Videoで配信されている前日譚の『賭ケグルイ双』に登場した乃木坂46の生田絵梨花や日向坂46の佐々木美玲らもしかり。原作に登場したキャラクターから映画オリジナルキャラまでそれぞれ立場は異なるが、英勉が仕掛ける『賭ケグルイ』の映像化という同じ世界観の中で、すでに持ち合わせている表現力の限界を突破した“振り切った”演技を見せることで、確実に新たな顔を獲得することになるだろう。

■久保田和馬
1989年生まれ。映画ライター/評論・研究。好きな映画監督はアラン・レネ、ロベール・ブレッソンなど。Twitter

■公開情報
『映画 賭ケグルイ 絶体絶命ロシアンルーレット』
全国公開中
出演:浜辺美波、高杉真宙、藤井流星(ジャニーズWEST)、松田るか、岡本夏美、柳美稀、松村沙友理(乃木坂46)、小野寺晃良、池田エライザ、中村ゆりか、三戸なつめ、矢本悠馬、森川葵
監督:英勉
脚本:高野水登、英勉
原作:河本ほむら/尚村透(掲載 月刊『ガンガンJOKER』スクウェア・エニックス刊)
主題歌:milet「checkmate」(SME Records)
配給:ギャガ
(c)河本ほむら・尚村透/SQUARE ENIX
(c)2021 「映画 賭ケグルイ2」製作委員会
公式サイト:kakegurui.jp 
公式Twitter:@kakegurui_jp 
公式Instagram:kakegurui_jp

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