細田佳央太×関水渚が見せる好対照の活躍 『町田くんの世界』からの2年間の進化を追う
さらについ先日には、7月から始まるテレビ東京系の「水ドラ25」枠『八月は夜のバッティングセンターで。』で仲村トオルとダブル主演を務めることが発表されたばかり。関水が演じるのは夏休みの間だけ叔父が営むバッティングセンターでアルバイトをすることになった女子高生という役どころで、そこに毎晩のようにやってきては野球になぞらえた人生論を語る元プロ野球選手を仲村が演じるわけで。この作品自体がスマホゲームを原案とした珍しい背景を持つこともそうだが、高校時代に野球部マネージャーを務めていたという関水の経験と知識が何らかのかたちで活かされるのであれば、ドラマ初主演ということ以上に大きな意味を持つことだろう。
そうした“目立つ”役柄で一気に飛躍する関水とは対照的に、細田のほうは着実に一段一段演技に磨きをかけようとしている印象だ。今年大ヒットを記録した『花束みたいな恋をした』のようにがっちりと物語の脇を固める役柄から、幼馴染を救うために事件に加担する少年を演じた『イチケイのカラス』(フジテレビ系)第4話のようなドラマへのゲスト出演など。関水がどの作品でも関水渚らしさが全面に押し出されたスタータイプなのに対し、細田の場合は作品によってまるで異なる表情を見せるカメレオン俳優タイプといったところか。『町田くんの世界』での2人の好対照さは、単に役柄の設定としてではなく両者が持ち合わせた特性の違いであったということがよくわかる。
現在放送中の『ドラゴン桜』(TBS系)で細田は、“東大専科”に加わる生徒の1人で、発達障がいを持ち視覚から得たものに対する類稀なる記憶力を持つ原健太役を演じている。5月23日に放送された第5話でフィーチャーされたこの役柄は、他の生徒役と比較して全体的なセリフ量が少なくとも、好きなものについて語る時には怒涛の長台詞をすらすらと放出する。さらに目を輝かせたり曇らせたりという表情の変化を一瞬で切り替えるスキルでぐっと視聴者を惹きつける。それぞれ異なる特筆すべき点を持った同世代の俳優たちのなかでも、この役柄を器用にこなす細田の表現力の豊かさは群を抜いているといえよう。
『町田くんの世界』が公開された2019年にはまだ名も知られておらず、初々しさとあやうさを共存させた俳優だった関水と細田。たった2年ここまでの進化を遂げたとあれば、近い将来トップクラスの俳優に成長した2人が再共演を果たすことに期待せずにはいられない。
※高橋海人の「高」は「ハシゴダカ」が正式表記。
■久保田和馬
1989年生まれ。映画ライター/評論・研究。好きな映画監督はアラン・レネ、ロベール・ブレッソンなど。Twitter
■放送情報
日曜劇場『ドラゴン桜』
TBS系にて、毎週日曜21:00~放送中
出演:阿部寛、長澤まさみ、高橋海人(King & Prince)、南沙良、平手友梨奈、加藤清史郎、鈴鹿央士、志田彩良、細田佳央太、西山潤、西垣匠、吉田美月喜、内村遥、山田キヌヲ、ケン(水玉れっぷう隊)、鶴ヶ崎好昭、駿河太郎、馬渕英里何、大幡しえり、深田竜生(少年忍者/ジャニーズJr.)、林遣都、佐野勇斗、早霧せいな、山崎銀之丞、木場勝己、江口のりこ、及川光博ほか
原作:三田紀房『ドラゴン桜2』(コルク)
プロデュース:飯田和孝、黎景怡
脚本:オークラ、李正美、小山正太
演出:福澤克雄ほか
製作著作:TBS
(c)TBS