若手俳優は趣味と実益を兼ねる傾向? セカンドジョブの可能性からみる、俳優の生き方

 近年、一般のサラリーマンの間でも副業を始める人が増えている。これは2018年に、働き方改革の一環として「副業・兼業の促進に関するガイドライン」が発表され、大手企業を中心に多くの企業で副業が解禁されたことがきっかけとなったものだ。しかしそれ以前から、芸能界では芸能活動以外に事業を展開しているお笑い芸人や俳優が多い。5月10日に都内で行われたイベント「映画『東京リベンジャーズ』おうちでプレミアムナイト」では、ダンスロックバンド・DISH//のリーダーで俳優の北村匠海が、10年後は何をしているか問われると「10年後は間違いなくカレー屋さんをやっている」と発言し、話題になった。

 先行きの不透明な芸能界で働く彼らにとって、副業を持つことは収入の安定につながる対策の1つだ。特に昨今はコロナ禍で映画やドラマの撮影が困難になったり、舞台公演がキャンセルになったりと、芸能界での仕事はさらに不安定になり、副業を考える俳優も増えているようだ。今回は副業で活躍する俳優を紹介しつつ、その今後の可能性について探っていこう。

コロナ禍の影響で副業を始めた大浦龍宇一

 ドラマ版『失楽園』(1997年/日本テレビ系)をはじめ、数多くの映画・ドラマに出演してきた俳優の大浦龍宇一は、コロナ禍で俳優業がままならなくなったため、葬儀社でのアルバイトを開始したと2021年1月に自身のブログで報告した。前年の12月から葬儀派遣会社で研修を受けていたという彼は、同年10月に父を亡くしたこともあり、この道を選んだのだそうだ。俳優業が長期間に渡って忙しくなれば、休むことができるのも葬儀社を選んだ理由だという。また彼自身「必ず、俳優という道においても、音楽の道においても、大きなプラスになると確信しています」と語っているとおり、人生経験が演技の豊かさにつながる俳優業にも、有益な仕事になるだろう。

コロナ以前から実業家としても活躍していた俳優たち

 実は、コロナ以前から副業をしている俳優は多くいる。よく知られているのは、バラエティでも活躍している哀川翔のカブトムシ養殖ではないだろうか。カブトムシが大好きだという彼は、東京の自宅と茨城の養殖場で5,000匹ものカブトムシを養殖している。彼は世界最大の86ミリの個体の羽化に成功したり、確率1万分の1とされる雌雄同体のカブトムシを羽化させたりしたことでも話題になった。好きこそものの上手なれと言うが、趣味の延長線上を超えて完全にプロの領域に達している。

 また、お笑い芸人には飲食店を経営している人が多いことでも知られているが、俳優では北村一輝が近年カレー店のオーナーになったことが話題になった。彼は長らく常連だったという大阪の老舗カレー店の暖簾分けを受け、2019年に「大阪マドラスカレー」赤坂店をオープン。飲食店の経営はこのコロナ禍で難しい部分もあるが、テイクアウトの利用などで店は繁盛しているようで、2020年には下北沢、2021年には吉祥寺に支店を出している。タイミング的にはコロナと重なってしまったが、彼の場合はその影響というわけではないようだ。

 山田孝之は、芸能人としてのコネクションを活かして事業を展開している。彼は2017年に株式会社ミーアンドスターズを設立し、取締役を務めている。同社は「“ファン”とスターをつなぎ“喜ぶ”をデザインする」をコンセプトに、インフルエンサーがそのファンに対し、世の中に流通していないプレミアムなモノや体験をライブ動画を通じて届ける事業を行っている。これまでの企画では、山田孝之に1日受付業務を委託する権利や、オリンピック金メダリストの北島康介と1対1で対決する権利をかけたオークションなどを開催したりしている。また2020年5月からは、コロナ禍を受けて、一般の企業向けにポストコロナ時代を生き抜くためのオンラインコンサルティングサービスを開始した。これは、柔軟な発想や奇抜な演出を得意とする山田孝之をはじめ、新規事業開発、マーケティング、メディアビジネスなどのプロが集結し、新たなビジネスのアイデアやノウハウを提供するというものだ。個性的なメンバーが集まる同社ならではのサービスといえるだろう。

 一方で収入の安定だけでなく、副業で社会的に意義のある事業を展開している俳優もいる。女優の柴咲コウは、衣・食・住すべての観点から“真によいもの”を世の中へ発信することをコンセプトとしたITベンチャー企業レトロワグラース社で、2017年から代表取締役兼CEOを務めている。同社はエンターテインメント事業として、歌手としても活躍する柴咲のオフィシャルサイトやファンクラブの運営をしつつ、地球環境や生態系に負担をかけないモノづくりに取り組むアパレルブランド「MES VACANCES」など、複数の事業を展開している。柴咲もまた、環境問題などに対する意識からこうしたビジネスに取り組んでいるのだろう。

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