西島秀俊、夏木マリが朝ドラで照らす光 『おかえりモネ』百音の心に残ったサヤカの言葉
誰かの、何かの役に立ちたい。それはそのまま、“生きる意味”にも繋がる。海の町を出て、森林に囲まれた場所で働き始めた百音(清原果耶)は自分の進むべき未来が覆われた靄の中にいた。『おかえりモネ』第3話では、そんな百音に大きな影響を与える気象キャスターの朝岡(西島秀俊)が登米市に訪れる。
毎朝テレビに出ている人が突然現れ、森林組合は一時騒然。朝岡は石ノ森章太郎の大ファンで、登米市にある「石ノ森章太郎ふるさと記念館」に詳しい人がいると聞いてやってきたのだという。しかも、実はサヤカ(夏木マリ)と古くからの知り合いだった。サヤカは朝岡との関係を「実はね、息子だ」と冗談めいて誤魔化しているが、そこには深いわけがありそうだ。
また、百音も地元の人からサヤカの“隠し孫”で新田の跡取りだと期待されていることが明らかに。みんなから「いずれは姫だ」と囃したてられ、百音はサヤカと2人きりになった後、将来に対する不安を零す。
妹の未知(蒔田彩珠)は「水産業を発展させたい」と研究者を目指し、光太郎(坂口健太郎)は「人の命を救いたい」と医者になった。一方で、誰かの役に立ちたいと漠然と思ってはいるけれど、自分のやりたいことも、好きなこともまだ分からない百音。誰かが夢に向かって歩みを進めている中で、ただ目の前のことに精一杯な彼女は心細くて不安だろう。それは暗闇の中で光を探しているようなものだ。
そんな百音にサヤカは「健全だ」と言う。死ぬまでも、死んでからも本当は何の役にも立たなくていい。それが60年以上生きてきたサヤカの結論だ。百音は「私はいませんでしたから」と3月11日の“あの日”を振り返った。自分は家族や生まれ育った町の人が大変だったところに居合わせなかった、何もできなかったという罪悪感が百音を苦しみ続けている。それを理解しているサヤカは、今はわからなくとも、いつか生きる上で心の支えになってくれるような言葉を授け、百音の「誰かの役に立ちたい」という思いを尊重した。「仁に過ぎれば弱くなる」。伊達政宗が残した言葉のように、一定の距離感を保って見守ってくれる大人は貴重な存在だ。