稲垣吾郎には“揺らぎ”が似合う 舞台『サンソン』シャルル役で魅せた葛藤

稲垣吾郎が『サンソン』で表現した“揺らぎ”

 稲垣吾郎には“揺らぎ”が似合うーー。

 舞台は18世紀のフランス・パリ。この地における唯一の死刑執行人であり、国の裁きの代行者として“ムッシュー・ド・パリ”と呼ばれる男がいた。彼の名はシャルル=アンリ・サンソン。父の跡を継ぎ、家業として死刑執行人を務めているシャルルだが、医師でもある彼は罪人に対して慈悲の心を捨てきれない。

 ルイ15世の死去とルイ16世の即位、そして市民の台頭により、大きく揺れ始めるフランス。罪人に対する拷問を禁止したルイ16世と心を通わせるシャルルだったが、王政に強い不満を持つ市民たちが起こした革命により、ルイ16世と、王妃、マリー・アントワネットは捕らわれの身に。シャルルは何とか事態を打開しようとするものの、民衆の怒りは収まらず、パリはますます不穏な空気に支配されていくーー。

 4月23日に東京建物 Brillia HALLにて開幕した舞台『サンソン-ルイ16世の首を刎ねた男-』(以下『サンソン』)。約5年半ぶりに新作舞台で主演を務める稲垣吾郎が演じるのは、18世紀に実在した死刑執行人、シャルル=アンリ・サンソンだ。

 本作で劇作を担当するのは「劇団☆新感線」の中島かずき。演出は『ホイッスル・ダウン・ザ・ウィンド~汚れなき瞳~』や『ジャンヌ・ダルク』など多くの話題作を手がけてきた白井晃。音楽は国内外でさまざまな作品に参加し、映画音楽も数多く作曲する三宅純が担う。

 じつはこの3人のクリエイターと稲垣吾郎がタッグを組むのは『サンソン』が2作目。1作目はこれまで3度上演された『No.9 -不滅の旋律-』で、稲垣は悲劇の作曲家、ヴェートーベンを熱演。その演技は高い評価を受けた。

 もともと、自身がMCを務めていた書籍紹介番組『ゴロウ・デラックス』(TBS系・2011年~2019年)で漫画『イノサンRouge(ルージュ)』をピックアップし、作者である坂本眞一氏のアトリエを訪ねるなど、氏が描く「サンソン家」の世界に強く惹かれていた稲垣。本作『サンソン』も、彼の強い想いが周囲を動かし舞台化が実現したという(本作のクレジットには「原作:安達正勝『死刑執行人-サンソン-』<集英社新書刊>坂本眞一『イノサン』に敬意を表して」との一文もある)。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「アクター分析」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる