ただの子ども向け料理番組ではない ミシェル・オバマ出演『ワッフルとモチ』のメッセージ

子ども向け料理番組『ワッフルとモチ』の魅力

 大きな話題となったストップモーション・アニメーション『PUI PUI モルカー』のTV放送が終了し、“モルカー・ロス”なる喪失感を味わっている人たちが少なくないという。だが幸いなことに、アメリカから人々を魅了する圧倒的な子ども番組が、またしても登場した。その名も、『ワッフルとモチ』(全10話)である。

 本作の主人公は、「冷凍食品の国」に住む“ワッフル”と“モチ”。“ワッフル”は、お菓子のワッフルと、イエティ(ヒマラヤに住む未確認動物)を両親に持つ生き物で、毛むくじゃらの体にお菓子のワッフルでできた耳やお腹がくっついている。そして、もう一人の主人公である、友達の“モチ”は、ストロベリーアイスをイチゴ色の餅で包み込んだ大福のような生き物だ。アメリカやヨーロッパでは、近年アイスクリームの大福が人気があるのだという。パペットとして表現されたあまりに愛らしい二人が、動いて喋っているところを見るだけでも、本番組を視聴する価値がある。

 いつも氷しか食べていないワッフルとモチの二人は、様々な料理を作ることのできるシェフになることを夢見て、冷凍食品の国からアメリカのスーパーマーケットにたどり着く。そして、元ファーストレディーのミシェル・オバマが演じるスーパーマーケットのオーナー“オバマ夫人”のもとで働くことになるのだ。さらにワッフルとモチは、食べ物や食材について学ぶため、アメリカ、日本、韓国、ウガンダ、ペルー、イタリアなど、世界中の国々、複数の地方へと、空飛ぶショッピングカートに乗って旅をするのだ。

「トマトはフルーツか、野菜か?」

 これが、トマトを題材とした第1話で投げかけられる疑問である。子ども番組だと思って甘く見ていた筆者は、ワッフルとモチが、トマトを野菜だと発見していくのが番組の内容なのだろうなと思い込んでしまった。だが、ワッフルとモチはショッピングカートで各地をまわり、様々な専門家の意見を聞くことで、「トマトはフルーツに分類できる」ことを知ることになる。そして、「料理に使われるフルーツは野菜と考えることもできる」という知見も得て、最終的に「トマトはフルーツであり、野菜とされることもある」という複雑な結論へとたどり着く。筆者は、この「子ども番組と思ってなめるなよ」とでもいうような、カウンターパンチを浴びた反省から、しっかり正座をするような気持ちで本番組をあらためて鑑賞することになった。

 それにしても、ふわふわしたワッフル、もちもちとしたモチの可愛さは尋常のものではない。アメリカの娯楽ニュース“Vulture”など、すでにメディアで発表されている製作インタビューを読むと、この両者のマペット製作を担当しているのは、ロサンゼルスの人形製作集団“Viva La Puppet”であるという。その中心人物であるミシェル・ザモラは、ワッフルのパペット操演と、声の出演をどちらも担当している。当初、ワッフルとモチの人形は、アニマトロニクスを利用したものにする案もあったというが、最終的には、偉大なマペット製作者ジム・ヘンソンが手がけた『セサミストリート』と同様、操演する棒が見えるクラシカルなタイプのマペットが採用された。

 驚くのは、おそらくコットン地などで制作されたマペットが、番組に登場する食べ物を本当に口に入れる場面があることだ。しかも、水っぽかったり油っこい食べ物であろうと、構わず口に入れることができる仕組みになっているのである。“Viva La Puppet”は、表面が食べ物によって汚れたときのために、スペアのマペットを用意したという。

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