橋本環奈らが“重厚なサスペンス”に挑む ゾクゾク感溢れる『連続ドラマW インフルエンス』

橋本環奈らが挑む“重厚なサスペンスドラマ”

「過去の話」では終わらない不気味な予感

 友梨の話を聞きながら、トモミの脳裏には次第にモヤのようなものがかかっていく。何かが引っかかるのだ。トモミは、翌日もまた友梨と会う約束をして一旦自宅に帰ることにすると、「よかった。このお話はぜひ及川先生に書いてもらいたいので」そう言ってジッと見つめる。その友梨の目が印象的だったのは、熱心なファンだからというわけではない。また別の意味があるように感じられるものだった。

 帰宅したトモミの手には友梨からもらった1枚のメモが。そこには「戸塚友梨」「坂崎真帆」「日野里子」の名前が記されている。家に着くと真っ先にクローゼットを開けていくトモミ。真っ先にあることを確かめるためだった。そして、開かれた高校の卒業アルバム。そこには3人の名前、そして「及川トモミ」の本名も。そう、トモミも彼女たちと同級生だったのだ。

 卒業アルバムを見返しても、すぐには思い出せない同窓生の面影……。大人になれば、誰もがそんなふうに記憶が断片的になっていくものだ。カセットテープのように、繰り返し繰り返し思い出すうちに、その映像は不鮮明になっていく。そして、同時進行で別視点の思い出があったことすらも忘れてしまうのだ。

 そんな記憶のエアポケットにストンと落とされたようなゾクゾク感がこの作品にはある。なぜ友梨は今このタイミングで、トモミにこの告白をしようと思ったのか。そして、まだ友梨の口から明かされていない第2、第3の事件の真相も気になって仕方ない。

濃厚な物語に仕上げる女優陣の熱演

 本作では、何より橋本環奈、葵わかな、吉川愛というストーリーの要となる女優たちの演技が魅力的だ。第1話だけを観ても、橋本と葵は友情が生まれる瞬間の青春時代のきらめきから、意図せず殺人事件の加害者となる絶望まで、見事にその振れ幅を演じきってみせた。また、吉川も仄暗い瞳から、環境を選ぶことができなかった少女の悲哀を体現する。いずれも1998年~1999年生まれと、昭和の世の中を知らない3人が、その時代ならではの空気感を掴んでいるのも感服する。

 さらに、何を考えているのか全く読めない大塚寧々の存在感のある演技。そして、物語を整理していくキーパーソンとなる鈴木保奈美の冷静さと動揺したときの表情のギャップに、観ている側の心がどんどんかき乱されていく。2人の妙な落ち着きぶりに対して、自分自身の記憶の片隅にも、思い出すことをやめたモヤのような思い出があったのではないかという気分になって落ち着かなくなるほどだ。

 次回予告では、3人の女子高生がさらに罪を重ねていく様子が描かれる。「ジジイを殺して」と迫る里子を吉川が、少しずつ追い詰められていく友梨を橋本が、友梨のためならと献身する真帆を葵が……繊細かつ迫真の演技で物語の中へと引きずり込まれていく。

 ノンストップで堕ちていく青春時代と、淡々と語られる現代とが今後どのように繋がり、そしてどこに着地するのか。実力派揃いな女優たちの名演技と共に、予想のつかない物語の顛末を、じっくり味わいたい。

■放送・配信情報
『連続ドラマW インフルエンス』
WOWOWプライムにて、毎週土曜22:00~放送(全5話)
WOWOWオンデマンドにて配信中
出演:橋本環奈、葵わかな、吉川愛、白洲迅、宮近海斗(Travis Japan/ジャニーズJr.)、大塚寧々、鈴木保奈美
原作:近藤史恵『インフルエンス』(文春文庫刊)
脚本:篠﨑絵里子
監督:水田成英、ヤングポール
音楽:林ゆうき、菅野みづき、奥野大樹
主題歌:Cö shu Nie「miracle」(ソニー・ミュージックレーベルズ)
製作:WOWOW、FCC
公式サイト:https://www.wowow.co.jp/drama/original/influence/

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