『にじいろカルテ』“やさしい世界”を保って迎えた大団円 最も求められるかたちの結末に

『にじいろカルテ』は見事なハッピーエンドに

 真空(高畑充希)の病気が悪化して動けなくなっても、みんなで一緒に生きていくことを約束しあった真空と太陽(北村匠海)、朔(井浦新)の3人。3月18日に最終話を迎えたテレビ朝日系列木曜ドラマ『にじいろカルテ』は、これまでこのドラマが守りつづけてきた“やさしい世界”を保ったまま迎える大団円。ハートウォーミングな作品として、最も求められるかたちの結末にたどり着いたのではないだろうか。

 虹ノ村に無口で謎に包まれた藤田(柄本時生)という男が移住してくる。一方で、嵐(水野美紀)をはじめ虹ノ村の人々は、まもなく行われる「のど自慢」の地区予選に向けて張り切り、真空たち虹ノ村診療所チームも出場させられることに。そんな中、朝食の席で最近暇な日が多いことを呟く太陽。するとたちまち、霧ヶ谷(光石研)に連れられて運ばれてきた藤田をはじめ、次々と患者が押し寄せ大忙しに。“最強”のチームワークで患者を救っていき、絆を確かめ合う3人。しかしある夜突然、真空は倒れて大きな病院に運ばれることになる。

 個性的な村人たちの和気あいあいとした雰囲気を中心に置き、診療所という舞台設定こそ存分に活かされながらも、あえて“医療ドラマ”らしさを前面に押し出してこなかった本作。それだけに、太陽の何気ないつぶやきに著しく朔が反応し、「医療ドラマなら暇と言った途端に大変なことが起こる」という言葉と、それに続くように次々と巻き起こる騒がしさからは、“医療ドラマらしさ”を皮肉るようなユニークさが垣間見える。しかもそこで、久しぶりに外科医“らしさ”を発揮する朔。やはり彼のキャラクターが持ついくつもの表情のギャップが、このドラマのコメディ部分を高めていると改めて感じる。

 そして後半、多発性筋炎の症状が現れて倒れてしまう真空。主人公が難病であるという設定も、振り返ってみれば真空が大病院を辞めて村にやってくるという導入のために機能していた部分が大きい。とはいえ「医者で患者」であるという主人公の立ち位置と、診療所の3人の関係性が明確に定まった最終回において改めて描かれることで、このドラマの最も伝えようとするメッセージがここにあるのだと捉えることができよう。病を理由に突き放された第1話と対比になるように、あふれている“やさしさ”。それは虹ノ村のような過疎地域に限らず、医者や患者という立場を超えた繋がりこそが重要であると証明する。そう考えると、これは紛れもなく“医療ドラマ”であると言わざるを得ないだろう。

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