高嶋政伸、忍成修吾ら“悪役俳優”に共通項? 黒幕のキャスティングが作品のカギに
“悪役”を得意とする、ないしは似合う俳優というのは日本の俳優界だけでも挙げればキリがないほどいる。かつてはいわゆる強面の俳優が、その風貌のイメージ通りに悪役を演じることが多かったわけだが、近年はその傾向は変わりつつある。例えば強面俳優の代名詞的存在であった遠藤憲一や松重豊がユーモラスな役柄を演じるようになったと同時に、小日向文代のように善人でも悪役でもどちらも器用に渡り歩くタイプも目立つようになってきたのだ。ましてや映画でもテレビドラマでも“意外な結末”を重宝する傾向が強くなったことで、視聴者がキャスティングの並びなどから、悪役の中でも最も“悪の権化”たる黒幕が誰かを深読みする動きが強まっていることもあり、いかに意外な人物をそこに配置するかが作品の成否を占うカギになっていることも否定できない。
つまり裏を返せば、かつてのように“悪役”一本でそれなりの地位を築き上げることが難しくなるほど悪役ポジションを狙う俳優が乱立している状態にあり、同時に完全なる“悪役”である黒幕の存在が、ある意味では主人公以上に物語を動かす重要なポジションにあるといえよう。『レッドアイズ』の劇中で、“先生”の存在につながる物語上の転機を演出した悪役を演じた忍成修吾も、出世作の『リリイ・シュシュのすべて』から悪役というイメージ一本でのし上がってきた稀有な俳優のひとりだ。そんな彼のさらに後ろに存在する“先生”というキャラクターは、必然的により手強い存在でなくてはならず、いくつもの顔を持ちうる人物でなくてはならない。そういった意味で、高嶋のように善人イメージから脱却する興味深い変化を経て悪役化した俳優というのは相応しく思える。
とはいえ、前述したように早々に描かれた“青いコートの男”であるという示唆に、「次はあなたの番です」と指示を飛ばしていることが窺える意味深な電話。さらには島原が電話で鳥羽のことを「先生」と呼ぶ描写など、ここぞとばかりに鳥羽=黒幕であるということが押し出されている流れを見ると、どうにもこれはミスリードなのかもしれないと勘ぐってしまいたくなるのも昨今の“意外な結末”がもたらした影響か。たしかに高嶋はもはや登場しただけで悪役に違いないという先入観を視聴者に植え付ける存在だ。このドラマが“意外な結末”を求めるのであれば、もう一捻りや二捻りは確実に起こりうることが容易に想像できる。
さて、3月6日に放送される第7話では、伏見が刑事時代に逮捕した夫婦から拉致されて、KSBCに窮地が訪れる。もちろんその背後で“先生”が糸を引いているというわけだ。仮に鳥羽が“青いコートの男”か“先生”、もしくはその両方であるにせよないにせよ、伏見と鳥羽の直接対決が今後どこかで待ち受けていることだろう。どのような答えが用意されているにしても、この鳥羽という人物がSNSで毎週のように加熱している考察を掻き回して盛り上げてくれることは言うまでもない。現代の悪役俳優に必要なのは、二面的で柔軟性を持った、ミステリアスな立ち回りというわけだ。
■久保田和馬
1989年生まれ。映画ライター/評論・研究。好きな映画監督はアラン・レネ、ロベール・ブレッソンなど。Twitter
■放送情報
『レッドアイズ 監視捜査班』
日本テレビ系にて、毎週土曜22:00〜22:54放送
出演:⻲梨和也、松下奈緒、趣里、シシド・カフカ、松村北斗(SixTONES)、高橋ひかる、木村祐一
脚本:酒井雅秋、福田哲平、まなべゆきこ
音楽:カワイヒデヒロ
チーフプロデューサー:池田健司
プロデューサー:尾上貴洋、茂山佳則(AX-ON)
演出:水野格、長沼誠ほか
制作協力:AX-ON
製作著作:日本テレビ
(c)日本テレビ
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