大倉忠義が『知ってるワイフ』で表現する“余白” ブランクを経て多面的な個性派に

 『知ってるワイフ』の元春を演じるにあたり、大倉は前述のインタビューにて、「元春を魅力的に見えるように演じようとは思いませんでした。台本に描かれている通り、ありのままな感じです」と語っている。大倉が元春に近いというよりも、素直に演じていく中で、元春というキャラクターに込められた意図が自然と伝わっているのだろう。

 こうした行間を感じさせる演技は以前には見られなかったもの。決定的に変わったのは近年だ。ドラマでは、2015年『ドS刑事』(日本テレビ系)を最後に2018年の『モンテ・クリスト伯』まで出演作がなく、映画でも2016年の『疾風ロンド』以降、前述の『窮鼠はチーズの夢を見る』まで公開作が途切れている。この間、関ジャニ∞の活動と並行して、2017年に東京グローブ座で行われた『蜘蛛女のキス』で主演舞台を踏んでいる。2018年にテレビドラマに戻ってきた時、大倉は他にいない個性的な俳優となっていた。

 『知ってるワイフ』の主人公は「もし~だったら」という可能性の中を生きている。元春が生きるもう1つの人生は、よく知っているようで出会ったことがない未来だ。そこには常に書き込むことのできる余白がある。定型句から抜け出し、解釈可能な余白を残した大倉の演技が、未体験の現実を前にした視聴者の新鮮な感動を引き出している。

■石河コウヘイ
エンタメライター、「じっちゃんの名にかけて」。東京辺境で音楽やドラマについての文章を書いています。

■放送情報
木曜劇場『知ってるワイフ』
フジテレビ系にて、毎週木曜22:00~22:54放送
出演:大倉忠義、広瀬アリス、松下洸平、川栄李奈、森田甘路、末澤誠也(Aぇ!group/ジャニーズJr.)、佐野ひなこ、安藤ニコ、マギー、猫背椿、おかやまはじめ、瀧本美織、生瀬勝久、片平なぎさ
脚本:橋部敦子
編成企画:狩野雄太
プロデュース:貸川聡子
演出:土方政人、山内大典、木村真人
音楽:河野伸
制作:フジテレビ
制作著作:共同テレビ
(c)フジテレビ

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