“大阪弁”から紐解く大阪朝ドラの魅力 『カーネーション』から『おちょやん』まで

“大阪弁”から紐解く大阪朝ドラの魅力

『あさが来た』商人の言葉とキャラクター

 一方、大阪の中心部では、河内弁や泉州弁とは全く異なる言葉が話されている。例えば、『あさが来た』。

  主人公のモデルとなった広岡浅子の嫁ぎ先である加島屋は「商人の街」である船場に近く、ここは「船場ことば」が話される。

 商売仕事は、サービス業だ。主人公の白岡あさ(波瑠)が嫁いだ両替屋にも当てはまる。お客様や社外の人間を相手にすると、丁寧な言葉が出てくるのは自然なことだ。船場ことばは、そうした「表向き」の特徴が強い。

 それに加え、あさは京都に生まれている。京都も京都でまた違う言葉が話されているが、やわらかな方言を使うという点では船場ことばに似ている。

 あさ自身の人柄は、極めておてんば。常に動いていないと気が済まない性分で、幼少期のころから型破りな性格を発揮していた。その一方で、話し方はどこか柔和。「お嬢様育ち」だからか、品のある振る舞いが身についている。

 船場ことばならではの穏やかな話し方で、「この人なら」と頼りたくなる口調、そして事業のために奔走するような性格が、絶妙に混ざり合う。そのバランスが「大阪有数の経営者」としての風格を見事に形づくっていたのだろう。

 ちなみに、あさの夫であり、玉木宏が演じる白岡新次郎についても特筆しておきたい。働くことを好まずフラフラしているが、それはむしろ妻の躍進の土台にもなった。型破りな妻を見守り、一途に愛する夫。玉木宏が紡ぐ船場ことばに胸を射抜かれた女性は多く、それがドラマヒットの要因となったのは言うまでもない。

 登場人物の生き様と言葉は、切っても切れない関係だ。ヒロインの生き様を描く朝ドラから方言や言葉を紐解いていくと、改めてその人物の人柄が見えてくる。朝ドラを楽しむポイントとして、ぜひ方言と言葉にも注目してみてほしい。

■桒田萌
ライター。1997年大阪生まれ、京都市立芸術大学卒業。関西を中心に、雑誌やWEBでクラシック音楽やエンタメ分野の記事を書いています。Twitter

■放送情報
NHK連続テレビ小説『おちょやん』
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45
※土曜は1週間を振り返り
出演:杉咲花、成田凌、篠原涼子、トータス松本、井川遥、中村鴈治郎、名倉潤、板尾創路、 星田英利、いしのようこ、宮田圭子、西川忠志、東野絢香、若葉竜也、西村和彦、映美くらら、渋谷天外、若村麻由美ほか
語り:桂吉弥
脚本:八津弘幸
制作統括:櫻井壮一、熊野律時
音楽:サキタハヂメ
演出:椰川善郎、盆子原誠ほか
写真提供=NHK
公式サイト:https://www.nhk.or.jp/ochoyan/

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