『君と世界が終わる日に』は“本気”のゾンビ作品 『ウォーキング・デッド』との共通項は?

 現在放送中のドラマ『君と世界が終わる日に』(日本テレビ系)は、日本が未だかつてないほど本気で作っているゾンビ作品だ。もともと、こういったジャンルの類が地上波放送で、しかも主演に竹内涼真、ヒロインに中条あやみという豪華な俳優を迎えて放送されていることが少し新鮮である。海外では、もとよりゾンビをテーマにした作品が根強い人気を博していたが、ここ数年の間にアジア圏、特に韓国からのゾンビ作品が世界的ヒットを収めた頃合いから、風向きが変わり始めたように思える。

 『君と世界が終わる日に』の前には、田中圭主演のドラマ『先生を消す方程式。』(テレビ朝日系)の中でもゾンビが取り扱われ、昨年1月から3月にかけてNHKオリジナルドラマ『ゾンビが来たから人生見つめ直した件』などが放送されているが、どちらもいわゆる深夜枠。その中でゴールデン枠、かつHuluとの共同製作ということで潤沢な資金で作られた大規模な『君と世界が終わる日に』は、間違いなく日本のゾンビコンテンツの中心にあり、牽引しているドラマだ。そんな本作は、正統派ゾンビドラマとしての完成度を高めるために、ありとあらゆる海外のゾンビ作品からの“典型”を綺麗になぞっている。

 もとより、ゾンビドラマを世界的にメインストリームにもってきた存在は10年以上前から放送されている『ウォーキング・デッド』である。2010年より開始し、2021年よりファイナルシーズン(S11)が本国で放送される予定だ。海外ドラマの中でもご長寿番組として愛されてきた本ドラマは、すでにいくつものスピンオフが存在し、映画化も決定している。ここまでゾンビを扱った作品の中でも幅広い年齢層、そして世界中に愛され(もちろん日本でも大人気)、長く息をしてきた本ドラマに『君と世界が終わる日に』は大きく影響を受けているように思える。『ウォーキング・デッド』を思わせるシーンが、特に、演出面や設定などを含めすでに放送された2話の中にたくさん登場しているのだ。今一度『君と世界が終わる日に』がヒットを目指して大先輩となる『ウォーキング・デッド』から得たアイデアとオマージュに目を向けて見たい。

※本稿には『君と世界が終わる日に』第2話までのネタバレが含まれています。

主人公が気を失っている間に崩壊する社会

 本ドラマの“『ウォーキング・デッド』らしさ”は、冒頭で主人公が事故に遭うシークエンスからすでにある。自動車整備工の主人公の間宮響は、いつものように出勤するがトンネル
に入ると地響きが起き、崩落事故に巻き込まれる。意識を取り戻すも携帯は繋がらず、救
助隊が助けにくる前に自ら瓦礫をわけて脱出するが、それまでに数日間経っている設定だ。外に出た彼が目にしたのは、もぬけの殻となり変わり果てた町の姿である。

 『ウォーキング・デッド』も、警察官のリックが意識不明の状態で入院するところから
始まる。そして目を覚ました彼は、花瓶の花が枯れていることに気づきながら異変を感じ
て病室を出る。彼の目の前にも、生きた人が忽然と消えてしまった世界、そしてようやく
現れた少女が“生きていない”ことにショックを受けるところから物語が幕を開けるわけだ。間宮も自分の職場にたどり着き、そこで変わり果てた姿の同僚に出会う。ちなみに、この同僚が人肉を食う姿を背中から映し、ゆっくり彼が振り返るというシークエンスはまさにゲーム『バイオハザード』で初めてゾンビが登場した時のムービーそのものだ。こういうところも、あらゆる成功したゾンビ作品から演出のヒントを得ているなと感じる。

 主人公が意識不明の間に舞台が整っているという作り方は、謎を多く用意しておくことで物語を今後発展しやすいという特徴がある。シーズン11にも及ぶ『ウォーキング・デッド』でさえ、まだ感染が始まった明確な原因は明かされていない。『君と世界が終わる日に』はすでにシーズン2の製作が決定されているため、長期戦で作り上げていく上でこういった初動から『ウォーキング・デッド』を手本にしているようだ。

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