長澤まさみがナレーションを担当 『すばらしき世界』スポット映像公開
西川美和監督最新作『すばらしき世界』の15秒スポット映像が公開された。
役所広司が主演を務める本作は、『復讐するは我にあり』(文春文庫)で直木賞を受賞した佐木隆三の小説『身分帳』(講談社文庫)を原案とした西川監督の最新作。これまで一貫してオリジナルにこだわり続けた西川監督が、初めて実在の人物をモデルとした原案小説をもとに、その舞台を約35年後の現代に置き換え、徹底した取材を通じて脚本・映画化に挑む。
下町の片隅で暮らす短気ですぐカッとなる三上(役所広司)は、強面の見た目に反して、優しくて真っ直ぐすぎて困っている人を放っておけない男。しかし三上は、人生の大半を刑務所で暮らした元殺人犯だった。一度社会のレールを外れるも何とか再生しようと悪戦苦闘する三上に、若手テレビマンの津乃田(仲野太賀)と吉澤(長澤まさみ)がすり寄りネタにしようと目論む。三上の過去と今を追ううちに、逆に思いもよらないものを目撃していく。生きづらい社会の中で、一度レールを外れても懸命にやり直そうとする実在の男と、彼を追う若きテレビマンのカメラを通して「社会」と「人間」の“今”を描く。
この度公開されたのは、敏腕TVプロデューサー・吉澤を演じた長澤まさみがナレーションを担当した「ドラマ編」と「問題作編」の2つの15秒スポット映像。「ドラマ編」は、「今ほど生きづらい世の中は無いと思うんです」と吉澤の今の社会を映し出す印象的なセリフから始まり、「問題作編」は、「俺はとうに足を洗ってる!」と役所演じる人生の大半を刑務所で過ごした男の怒号が鳴り響く映像に仕上がっている。
長澤が演じる吉澤は、若手テレビマンの津乃田(仲野太賀)に刑務所の受刑者の経歴を事細かに記した台帳「身分帳」を送り、13年ぶりに出所した三上正夫(役所広司)という人物をテレビ番組のネタとして取材するよう焚きつける。乗り気ではなかった津乃田は言われるがままに三上に近づき取材を敢行。三上の密着映像を目にするなり、「もう最高じゃん……!」と、様子を伺う津乃田の事は素知らぬふりで不敵な笑みを浮かべる。三上と対面するや、本音と建前を使い分け言葉巧みに三上をそそのかそうとする。
“この役には長澤まさみしかいない”と思ったという西川監督は「(長澤さんは)年齢と共にどんどん幅が広くなっている。もちろん、画面的にもNo.1の美しさだと思います。きれいな女優さんであればあるほど、なかなかヒール(悪役)役を受け入れることに時間がかかると思うんです。でも今の長澤さんなら、これくらいの悪役は、跳ね返してやってくれるだろうなと思ってお願いしました」と語る。
吉澤というキャラクターについて、西川監督と衣裳合わせの際に人柄や仕事に向かう姿勢などを話したという長澤は、西川組、役所の芝居に対する姿勢に触れ、「常に緊張感があり、コツコツと積み重ねる仕事だと改めて思った。求められているものが、どんどん明確になっていくのが楽しかった」と現場を振り返る。「台本はのめりこむようにあっという間に読んでしまいました、時代の流れと共に変わっていく人間の感覚について考えさせられましたね。(出所したばかりの三上は)時代錯誤な人に感じられるけど、そういう時が経ったことに気付いていない人はじつは世の中には沢山いると思います。最後はふしぎと心が温かい気持ちになる作品です」と思いをはせた。また、役所演じる三上、西川作品の男性像について「三上はどこか愛らしくて可愛らしい一面があるので、(観客は)感情移入していけると思います。過激なシーンもあるんですけど、それがクスクス笑えるシーンになるんです。お芝居を重ねるうちに三上の別の顔をもっともっと観たいと思っていました。西川監督の作品に出てくる男性たちは、どこか欠点があって、完璧でない部分が人間らしさにつながっていると思います」と語っている。
■公開情報
『すばらしき世界』
2月11日(木・祝)全国公開
出演:役所広司、仲野太賀、橋爪功、梶芽衣子、六角精児、北村有起哉、長澤まさみ、安田成美
脚本・監督:西川美和
原案:佐木隆三著『身分帳』(講談社文庫刊)
配給:ワーナー・ブラザース映画
(c)佐木隆三/2021「すばらしき世界」製作委員会
公式サイト:subarashikisekai-movie.jp