ゴズリングとファスベンダーの間で揺れる人類のさだめ 『ソング・トゥ・ソング』が描く大人の恋愛

『ソング・トゥ・ソング』で味わう大人の恋

 リアルサウンド映画部の編集スタッフが週替りでお届けする「週末映画館でこれ観よう!」。毎週末にオススメ映画・特集上映をご紹介。今週は、マイケル・ファスベンダーを見るたびに邪な考えが浮かんでしまうアナイスが『ソング・トゥ・ソング』をプッシュします。

『ソング・トゥ・ソング』

 クリスマスですね。2020年は24日も25日も平日で、あまりクリスマス気分が味わえません。今週最終回を迎えたドラマ『この恋あたためますか』(TBS系)では、ヒロインの樹木(森七菜)ちゃんがイヴ派、恋人の浅羽(中村倫也)が当日派という点で論争を繰り広げていました。確かに彼女の年齢の時、24日の夜にこだわっていたかもしれない。そういう点では、26日の土曜日まで待てるようになった自分は少し大人になったのかな、なんて思ったり思わなかったり。

 “大人の恋”を考えるうえで、ぴったりの映画が『ソング・トゥ・ソング』。歌を歌うことを夢見ながら何者にもなりきれず、痛みを通して生を感じるフリーターのフェイ(ルーニー・マーラ)。そんな彼女に温もりと肉体を超えた魂の関わりを教える、売れないソングライターのBV(ライアン・ゴズリング)。フェイに痛みと快楽を与えるが、心が空洞の成功した大物プロデューサーのクック(マイケル・ファスベンダー)。そして彼が見つけた、夢を諦めたウェイトレスのロンダ(ナタリー・ポートマン)。この4人の恋心や肉欲、渇望、焦燥感が交差するラブストーリーです。監督・脚本を手がけるのは、ひりつく愛を描く天才テレンス・マリック。

 それぞれの登場人物の独白によって紡がれていくストーリー。その感情と考えが、あまりにもリアル過ぎます。心を通わせることを知らないから、何かをどう感じたらいいのかわからないから、“痛み”という痛覚を通して何かを感じようとする。激しい性行為でしか、満足ができない。そんなフェイが、肉体的に満足させてくれていたクックにはない、魂や優しさを持つ男BVに出会う。そこで初めて、愛を実感するわけです。しかし、体の相性はクックの方が良い。それに、自分の持て余す虚無感を共有できる相手でもある。さあ、難しい問題です。ただでさえ、この映画を通して「ライアン・ゴズリングとマイケル・ファスベンダーがそれぞれ違うアプローチをしながら自分に迫ってくる」ことの破壊力を痛感するのですから。どちらかを、選べと。選べません。

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