年末企画:田幸和歌子の「2020年 年間ベストドラマTOP10」 今は戻れないビフォーコロナの熱狂

田幸和歌子の「2020年ドラマTOP10」

 リアルサウンド映画部のレギュラー執筆陣が、年末まで日替わりで発表する2020年の年間ベスト企画。映画、国内ドラマ、海外ドラマ、アニメの4つのカテゴリーに分け、国内ドラマの場合は、地上波および配信で発表された作品から10タイトルを選出。第9回の選者は、テレビドラマに詳しいライターの田幸和歌子。(編集部)

1.『ホームルーム』(MBS/TBS)
2.『姉ちゃんの恋人』(カンテレ・フジテレビ系)
3.『30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい』(テレビ東京系)
4.『猫』(テレビ東京系)
5.『MIU404』(TBS系)
6.『捨ててよ、安達さん。』(テレビ東京系)
7.『コタキ兄弟と四苦八苦』(テレビ東京系)
8.『70才、初めて産みますセブンティウイザン。』(NHK総合)
9.『心の傷を癒すということ』(NHK総合)
10.『共演NG』(テレビ東京系)
番外.『これっきりサマー』(NHK総合)

 コロナ禍によって、世界が大きく変わり、エンタメのあり方・求められるものも一気に変容してしまった感のある2020年。

 1位に選んだ『ホームルーム』は、今はもう戻れない、ビフォーコロナの熱狂・興奮に満ちた作品である。これが今年の作品なんて信じられないくらい、もはや遠い過去のように思える。これは意欲作が目立つ毎日放送(MBSテレビ)制作のドラマ枠「ドラマ特区」で放送された1月期の作品。テーマは「学園サイコ・ラブコメ」なのだが、山田裕貴演じるイケメン高校教師「ラブリン」(ただしド変態)と、秋田汐梨演じる真面目で純粋な女子生徒・桜井幸子(ただし、負けず劣らずド変態)が繰り広げる、歪みまくった愛に、めまいがするくらいだ。

『ホームルーム』(c)「ホームルーム」製作委員会・MBS (c)千代/講談社

 陰湿ないじめを受け続ける幸子と、そんないじめに激怒し、犯人捜しをするラブリン。しかし、実はその犯人は「不幸な目に遭う幸子を守ることが自分の使命」と考えているラブリンで……。目をつぶれば浮かんでくるのは、尻を丸出しにしてベッドの下で変態的な笑みを浮かべる山田裕貴や、薄幸な雰囲気を漂わせつつ、接着剤がスカートについて動けずにラブリンに椅子ごと運ばれ、恍惚の表情を浮かべる秋田汐梨の姿などなど……正直、リアリティなんて全くないし、心が癒されたり、元気をもらえたりするわけでもない。社会問題にも踏み込んでいないし、共感もしない。しかし、強烈に刻み込まれてしまったように、今も忘れられないセリフの数々、映像の数々が鮮明に浮かび上がる。キャスティングが完璧で、映像も凝りに凝っていて、音楽もかっこよく、何しろ理屈抜きに抜群に面白いのだ。

 そして、こうした無意味な熱狂の渦に巻き込んでくれるような作品は、コロナ以降では生まれにくくなるだろうと改めて感じて寂しくなる。

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