『DIVER-特殊潜入班-』が最終話で示した“正義”と“善悪” 福士蒼汰にあった狂気性のワケ

『DIVER』が示した“正義”と“善悪”

 佐根村が遠藤を射殺することを止めたのは、その懺悔や後悔の気持ちを佐根村には味わわせたくはない、また自分の命の恩人である岡本の大事な存在であるからこそ彼を復讐の連鎖に引きずり込まないように、何としてでもそれだけは阻止したかったのだと思われる。

 岡本が自分の前で、自分を生かすために銃を引いたこと、その時に残した言葉「生きろ。生きて悪を断てよ」は、兵悟にとってはある種呪いのように亡霊のように常につきまとう。あの瞬間、一度兵悟は死んだのだろう。あの瞬間以降の兵悟は、「生きている」のではなく、岡本の命と引き換えに常に「生かされている」のだ。自身の意思に関わらず、想いを託され十字架を背負って生きるしかない、それもまた重く苦しいことに違いない。

 兵悟が垣間見せる“狂気性”は、一度死んでいる者だからこそ、また自分の意思に関わらず「生きるしかない者」だからこそ持ちうるものだったのかもしれない。

 伊達が阿久津に言い放った「正義」と「善悪」の関係性は的を射ている。「上層部はごちゃごちゃやってるかもしれないが、現場は一つでも犯罪を減らそうと必死。正義だのなんだの大義名分を掲げているうちに善悪の判断も付かなくなっちまったんだな」。

 「正義」も「善悪」も何に目を向けるか、誰を主語にするかで全く意味するところが異なってくる。また自分の都合の良いように捻じ曲げることだってできてしまう。一見、崇高な理想や正しさも、それが独りよがりになってしまったり過剰になってしまった瞬間、一人ひとりの血と涙の犠牲をも厭わず人を傷つけ暴走し始める、いとも簡単に「悪」にも転じ得ることを肝に銘じたい。

■楳田 佳香
元出版社勤務。現在都内OL時々ライター業。三度の飯より映画・ドラマが好きで劇場鑑賞映画本数は年間約100本。Twitter

■放送情報
『DIVER-特殊潜入班-』
カンテレ・フジテレビ系にて、毎週火曜21:00〜放送(全5話)
出演:福士蒼汰、野村周平、片瀬那奈、浜野謙太、正門良規(Aぇ! group / 関西ジャニーズJr.)、中山義紘、正名僕蔵、安藤政信、りょう
原作:大沢俊太郎 『DIVER-組対潜入班-』(集英社)
脚本:宇田学
演出:宝来忠昭、木村弥寿彦(カンテレ)、西片友樹
プロデュース:萩原崇 (カンテレ)、大城哲也(ジニアス)
制作著作:カンテレ
(c)カンテレ
公式サイト:https://www.ktv.jp/diver/
公式Instagram:https://www.instagram.com/diver_ktv/
公式Twitter:@diver_ktv

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