恋愛モノで続編は珍しい? 『ルパンの娘』武内英樹監督が語る、コメディドラマの極意

『ルパンの娘』監督が語る、コメディ作り

『電車男』『のだめ』『ルパンの娘』を名作コメディに仕上げる“秘伝のタレ”?

『翔んで埼玉』(c)2019映画「翔んで埼玉」製作委員会

ーー『翔んで埼玉』をはじめとする、監督のどこか“ぶっ飛んだ作風”はいつ生まれたんですか?

武内:深津絵里さんと常盤貴子さんの『カバチタレ!』(フジテレビ系)の時に、ちょっとぶっ飛んでる設定なんだけど、2人がとても真剣に自分たちの生き様を表現してる姿を見て、“笑えるし感動する”ということがわかって。『のだめカンタービレ』もふざけたキャラだけど音楽に向かって真摯な2人が指揮者とピアニストとして音楽の高みを目指していくっていうギャップを描いたり。芯はすごいしっかりしてる話なんだけど、周りがどうやってふざけていくかっていうのは『カバチタレ』『のだめカンタービレ』とか、『電車男』もそうです。オタクなんだけど、オタクとしての矜恃があって、その美しさと気高さを描いているというのは、作りが似ています。『翔んで埼玉』もどれだけディスられても埼玉県民としての誇りを持っていて、その美しさに感動するっていう……どれも同じことをやってますね(笑)。『ルパンの娘』も泥棒の矜恃ですから。

『のだめカンタービレ』(c)フジテレビ

ーー『のだめカンタービレ』は先日再放送(関東ローカル)もあって、改めてみんな大好きな作品なんだなと。どの作品もやはり役者とキャラクターのハマり具合が絶妙です。

武内:僕も15年ぶりぐらいに久々に観ました。キャスティングの時点で、この人が来るからこの人にやらせようっていうのはできるだけやらずに、役を脚本で作って、多少知名度が低くても、ハマっていることの方が大事だなと思っています。あとはできるだけ奇想天外な設定を作って、その設定を信じ込んでもらって、真面目にやってもらうだけ。みんなすぐふざけようとするから、『テルマエ・ロマエ』の時も阿部(寛)さんに「ふざけないでください」って言いました(笑)。コメディってみんなふざけようとするんですけど、それが1番スベるので。「とにかく真面目に、ふざけないでくれ!」というのは常に言っています。今回は瀬戸さんにも最初にそれをかなり言いましたしね。よく見ると全くふざけてないんですよ、瀬戸さんも深田さんもどんぐりさん、小沢(真珠)さんに関しても。

ーーどこまでふざけていいかどうかの、面白さを表現する塩梅は難しそうです。

武内:もう感覚で身についているものですね。『電車男』から『翔んで埼玉』までで継ぎ足した“秘伝のタレ”があるので、僕は感覚的に分かっているのですが、説明がなかなかできないものだから、まだそれが分からないセカンドディレクターが大変そうで。みんなどうしてもコメディ芝居って大袈裟にやってしまうんですが、そうすると違ったものになってくるので、「やりすぎだよ」「もっとやっていいよ」って常に管理してやっています。

ーー時代によって受け入れられるドラマの面白さも変化するなか、『電車男』『のだめカンタービレ』など、その時代を代表するようなヒット作を生み出してきた秘訣はなんだと思いますか?

武内:やってることは同じなんですよね。『電車男』の頃は、秋葉原が急に注目されているという世相があって。その時に起きている世の中の流行り、そこに対して敏感であることが大事なのかなと思います。その時に、その時代で何が求められているのかを感じる力はすごく大事で、そこに“秘伝のタレ”を持ち込んで同じフォーマットでやっても、その時代に則しているので新しいものに見えてくるんだと思います。

ーー『ルパンの娘』だと今の時代に求められている何を映しているでしょうか?

武内:やっぱり“家族愛”です。家族というものが少し希薄になっている中で「家族っていいよな」と伝えていけたら。特に続編では、近年では珍しく、今はコロナ禍で、家族がまとまっている状況も多いと思うので、タイミング的にはぴったりかなと。物語の中にも、泥棒の自粛をしたり、泥棒のリモートワークやってみたり、ちょっと世相を盛り込んでいます。みんなやっぱり今、それぞれの家族が大変で苦しみながら生きているなかで一服の清涼剤じゃないけど、これを観てホッと笑って、自分たちの家族もいいよねって思ってくれたら嬉しいですね。

ーーコロナ禍で自宅にいる時間が増えて、ドラマの楽しさを再確認した人も多かったと思います。

武内:そうですね。僕も自粛期間中は暇だったからかなり韓流ドラマとか観ましたよ。『愛の不時着』(Netflix)は勉強になりました。北朝鮮の兵士と金持ちで不遇のお嬢さんって、相当どマジな話ですよね。でも北朝鮮の住人キャラクターの使い方とか、部下の兵士たち4人組とか、いい塩梅でコメディを混ぜていて。シリアスな設定なのにコメディをぶち込んでくるのは作り方として、ちょっと似てるなとも感じました。とても共感できて、同じジャンルの作品として、こういうこともさらにできるんだっていう発見もありました。

『愛の不時着』(Netflix)

ーー最後に監督が思う『ルパンの娘』の魅力を、続編への見どころも含めて教えてください。

武内:今は医療モノとか刑事モノが多い中で、『ルパンの娘』はとても異色に見えていると思うんですけど。良さはあまり何も考えずに観てもらって、“疲れない”、そして“楽しめる”ドラマです。何が出てくるかわからない、この話どこに向かっていくの? という感じで作ってるので、何が出てくるか楽しみにするおもちゃ箱みたいな感覚で観てもらえると嬉しいですね。テレビを付けたら「またアホなことやってる」っていう感じで、気楽に構えないで楽しんでいただけたらと思います。

■番組情報
木曜劇場 『ルパンの娘』
フジテレビ系にて、10月15日(木)スタート 毎週木曜22:00~放送
※初回15分拡大
出演:深田恭子、瀬戸康史、橋本環奈、小沢真珠、栗原類、どんぐり、藤岡弘、(特別出演)、松尾諭、大貫勇輔、信太昌之、マルシア、我修院達也、麿赤兒、渡部篤郎
原作:『ルパンの娘』 『ルパンの帰還』 『ホームズの娘』 横関大(講談社文庫刊)
脚本:徳永友一
プロデュース:稲葉直人
監督:武内英樹
制作・著作:フジテレビ 第一制作室
(c)フジテレビ
公式サイト:https://www.fujitv.co.jp/Lupin-no-musume2020/
公式Twitter:@lupin_no_musume
公式Instagram: @lupin_no_musume

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