有村架純、のん、小松菜奈の相手役に続々抜擢 林遣都が求められ続ける理由
2007年に映画『バッテリー』の主演でデビューした林は、同作でいくつもの新人賞を受賞し、早くからその存在を印象付け、『ちーちゃんは悠久の向こう』『DIVE!!』『ラブファイト』『風が強く吹いている』と立て続けに主演映画に出演していった。成長期ならではの強さと弱さに揺れているようなこのころの作品も秀作ぞろいだ。そして二十歳を超えてからはその実力により幅を持たせていく。2012年には『荒川 アンダー ザ ブリッジ』『ガール』『闇金ウシジマくん』『莫逆家族-バクギャクファミーリア-』『悪の教典』が公開され、その後は『ST〜警視庁科学特捜班〜』『玉川区役所 OF THE DEAD』など、テレビドラマでも印象を残していったが、やはり改めてのブレイクは『おっさんずラブ』(2018年/テレビ朝日系)のヒットである。
主演の田中圭の憎めない主人公ぶりもさることながら、林が見せた牧凌太の清さがなければ、この美しい物語は成立しえなかった。その後も安定した演技力を見せた連続テレビ小説『スカーレット』(NHK総合)や、追い詰められ、ギリギリの我慢も超えてしまった青年の苦しみを爆発させ、多くの生徒役のなかでも群を抜いた存在感を示したスペシャルドラマ『教場』(フジテレビ系)など、その実力を発揮してきた。
そして『世界は3で出来ている』(フジテレビ系)での素晴らしさ。コロナ禍だからこそ生まれた同作では、1卵生の三つ子を林がひとりで見事に演じ分け、たったひとりで物語に引き込み続けた。長男・泰斗の生真面目さ、中間子である次男・勇人のバランス力、そして三男坊・三雄の愛らしさ。表情も姿勢も、それぞれの特徴がありつつも、リアルから外れた過剰な芝居はない。そのうえで、それぞれがしっかりとその人として生きていた。「上手いな」などと考える間もなく、なんの違和感も抱かせずに、3兄弟のおしゃべりを見守りながら時間が過ぎていく。そして「ウィズコロナ」時代を通じて感じたリアルな痛みと、それでも続く明日への思いを抱かせてくれた。
思うに林は、容姿もそうだが、とても澄んだ魅力を感じさせる俳優だ。12月には30歳を迎えることもあり、ここ数年、ぐっと落ち着きが増して、大人の男のオーラが滲んできたが、それでも瑞々しさを失わず、澄んでいる。そして『世界は3で出来ている』のように、ひとりで立てる揺るぎなさがあるからこそ、強いアピールをせずとも、その透明度でキャラクターの呼吸をしっかりと作品に染み渡らせる。明こうと暗かろうと、等身大の青年だろうがアウトローだろうが、その浸透力は変わらない。もちろんヒロインの横でも。待機作には瀬々敬久監督、佐藤健主演の『護られなかった者たちへ』、篠原哲雄監督による主演作『犬部!』も連ねる。林遣都はその変わらぬ澄んだ力で、ひとつひとつの役柄、作品を受け入れ受け止めながら、観る者を引き込み、求められ続ける。
※記事初出時、一部に記述の誤りがありました。訂正してお詫びいたします。
■望月ふみ
70年代生まれのライター。ケーブルテレビガイド誌の編集を経てフリーランスに。映画系を軸にエンタメネタを執筆している。親類縁者で唯一の映画好きとして育った突然変異。
■放送情報
『姉ちゃんの恋人』
カンテレ・フジテレビ系にて、10月27日(火)スタート 毎週火曜21:00〜放送
出演:有村架純、林遣都、奈緒、高橋海人(King & Prince)、やついいちろう、日向亘、阿南敦子、那須雄登(美 少年/ジャニーズJr.)、スミマサノリ、井阪郁巳、南出凌嘉、西川瑞 、和久井映見、光石研、紺野まひる、小池栄子、藤木直人ほか
脚本:岡田惠和
音楽:眞鍋昭大
演出:三宅喜重(カンテレ)、本橋圭太、宝来忠昭
プロデュース:岡光寛子(カンテレ)、白石裕菜(ホリプロ)、平部隆明(ホリプロ)
制作:カンテレ、ホリプロ
(c)カンテレ
公式サイト:https://www.ktv.jp/anekoi/
公式Twitter:https://twitter.com/anekoi_tue21
公式Instagram: https://www.instagram.com/anekoi.tue21
■公開情報
『私をくいとめて』
12月18日(金)、全国ロードショー
出演:のん、林遣都、臼田あさ美、片桐はいり、若林拓也
監督・脚本:大九明子
原作:綿矢りさ『私をくいとめて』(朝日新聞出版)
製作幹事・配給:日活
制作プロダクション:RIKIプロジェクト
企画協力:猿と蛇
(c)2020『私をくいとめて』製作委員会
公式サイト:kuitomete.jp
公式Twiter:@kuitometemovie
『恋する寄生虫』
2021年全国ロードショー
主演:林遣都、小松菜奈
監督:柿本ケンサク
脚本:山室有紀子
原案:三秋縋『恋する寄生虫』(メディアワークス文庫/KADOKAWA刊)
配給:KADOKAWA
(c)2021「恋する寄生虫」製作委員会
公式サイト:koi-kiseichu.jp