『わたどう』ドラマオリジナルの結末に ドロドロ愛憎劇に込められたさまざまな救い

『わたどう』ドラマオリジナルの結末に

 このドロドロ愛憎劇にも、最終話には様々な救いが散りばめられていた。そもそも、女将が当主殺しの犯人ではなかった点、決して許されることではないが多喜川が偶発的に事件を起こしてしまったこと、さらに樹も最期には女将に謝っていたこと(ただ、その後さらに傷つけてしまう訳だが)。多喜川が女将に復讐しようとしたのを七桜が止めに入り、そして本当に幸運なことに多喜川がさらに罪を重ねることを阻止できたこと。女将があのような結末を迎えたのは何も自暴自棄になってのことだけではなく、その先に何より我が子を一番に想う純粋で切実な親心があったこと。

 また、こんな痛ましく悲惨な事件が起きたからこそ、代々脈々と受け継がれてきた「光月庵」の看板を守ための鉄則「血縁関係のあるものが正式な後継者になる」をも一旦白紙にし、除夜祭での和菓子対決で正々堂々と店主を選ぶと大旦那・宗寿郎(佐野史郎)に決意させたのだ。自身が家柄や世間体にばかり囚われてしまったばかりに樹と百合を失ってしまったことに対する報いが少しはできたのではなかろうか。何よりこれまで彼自身に非がある訳ではないのにつらく当たってきてばかりだった椿に対して、ようやく最期の最後に謝罪し、心からの褒め言葉とエールを贈ることができた。

 今日子と、椿の元婚約者である栞(岸井ゆきの)は状況が似ているにもかかわらず、栞は全く別の道を選ぶことができたのも希望となった。それは他でもない「見えていないだけですぐ側にある愛情」に気づくことができたおかげではないだろうか(それを教えてくれたうちの1人・城島(高杉真宙)と結ばれるのも光月庵で生まれた奇跡の一つと言えるだろう)。

 そして、何よりこれから七桜と椿が幼少期のように手と手を合わせて蘇らせていく「光月庵」は、人を不自由に縛りつけてしまうような重荷としてではなく、それぞれの大切な思い出が詰まっており、ふと立ち帰れる心の拠り所になってくれることだろう。あらゆる因縁から解き放たれた2人が自由にずっとこのまま一緒にいられるであろうことを感じさせてくれるラストを観られて本当に幸せだった。

■楳田 佳香
元出版社勤務。現在都内OL時々ライター業。三度の飯より映画・ドラマが好きで劇場鑑賞映画本数は年間約100本。Twitter

■放送情報
『私たちはどうかしている』
日本テレビ系にて、毎週水曜22:00〜放送
出演:浜辺美波、横浜流星、高杉真宙、岸井ゆきの、和田聰宏、岡部たかし、前原滉、草野大成、山崎育三郎、須藤理彩、中村ゆり、鈴木伸之、佐野史郎、観月ありさ
原作:安藤なつみ『私たちはどうかしている』(講談社『BE・LOVE』連載)
脚本:衛藤凛
演出:小室直子、猪股隆一
音楽:出羽良彰
チーフプロデューサー:西憲彦
プロデューサー:鈴間広枝、松山雅則(トータルメディアコミュニケーション)
制作協力:トータルメディアコミュニケーション
製作著作:日本テレビ
(c)日本テレビ
公式サイト:www.ntv.co.jp/watadou
公式Twitter:@watadou_ntv
公式Instagram:@watadou_ntv

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