『わたどう』ドラマオリジナルの結末に ドロドロ愛憎劇に込められたさまざまな救い

『わたどう』ドラマオリジナルの結末に

 『私たちはどうかしている』(日本テレビ系)最終話では、光月庵の後継者を懸けた和菓子対決の行方、それから七桜(浜辺美波)と椿(横浜流星)の恋模様の2つがどう決着したのかが描かれた。原作ファンから注目を集めたのは、同名漫画がまだ完結していない中、ここまで原作の世界観、ストーリーに忠実に進められてきた本ドラマがどう幕を下ろすのかというところだった。

 原作では、どうやら多喜川(山崎育三郎)の父親と女将・今日子(観月ありさ)が訳ありの関係で、多喜川と椿が兄弟であろうところまでが示唆されていた。

 それが、まさか光月庵の先代当主の樹(鈴木伸之)殺しの犯人が多喜川だったとは……。ドラマでも何やら多喜川と居合わせるとバツの悪そうな顔を見せていた女将の様子は、てっきり父親との良からぬ仲について知られているからなのかと思っていたが、まさか彼が事件を起こした(巻き込まれたとも言えるが)張本人だったとは。あまりに予想外の黒幕にSNSも騒然だった。

 多喜川による罪の告白シーンは、制作陣が同じだという『あなたの番です』(日本テレビ系)を彷彿とさせ、人の二面性、というよりも多面性が狂気とともに滲み出ていた。

 思えば、山崎育三郎が犯人役だなんてことがこれまでの作品であっただろうか。ここまで多喜川の頼り甲斐がある七桜への献身ぶりを知っているからこそ憎めず、「何かのっぴきならない事情があったに違いない」とも推測できるし、一方でずっと七桜が傷つき苦しむ様子を(いくら自首すると決めていたとは言え)近くで見続けてきてプロポーズまでしてしまう様子には少しサイコパスっぽさも感じられなくはない。

 母親を精神的に追い込む原因を作った女将を恨み、その女将を引きずり下ろすために同じく女将に恨みを持っているだろう七桜を利用することを思いつくというのが、原作で語られていた彼が七桜に近づいた理由だったが、ドラマでは少し設定が変わっていた。自首する前に七桜が作った和菓子を食べたら彼女の母親・百合(中村ゆり)が作る味と全く同じで、自分の罪の重さを再確認し「七桜ちゃんをいるべき場所・光月庵に戻してあげなきゃ。そのためには女将を追い出さねばと思った」と話していた。

 多喜川もある意味、旦那からの愛情を受けられずに、あるいは現実を受け入れられず壊れてしまった自分の母親と今日子という女性2人に、自身の人生を狂わされた側だとも言えなくはない。そんな中、どんな惨事も誰かのせいにせずに自身で果敢にぶつかっていこうとする七桜の芯の強さや、どんなに傷つけられても自分のことよりも椿を心配する気高い優しさに触れ、癒されて救われてきたのかもしれない。七桜に対するプロポーズもおそらくは本音からで、だからこそ自身が大切に想う人の本当の幸せを願って、七桜に「和菓子対決が終われば、それで椿くんとの関係も決着するのかな」と発破をかけていたのだろう。

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