『キングダム』の縁が繋いだ幻の侍映画 山崎賢人が『狂武蔵』で叶えた坂口拓の9年間
リアルサウンド映画部の編集スタッフが週替りでお届けする「週末映画館でこれ観よう!」。毎週末にオススメ映画・特集上映をご紹介。今週は、子供の頃にすぐ傘を剣にして侍ごっこをしていた大和田が『狂武蔵』をプッシュします。
『狂武蔵』
1604(慶長9)年、宮本武蔵(坂口拓)に道場破りをされた名門吉岡道場は、既にこれまで2度の決闘で師範清十郎とその弟・伝七郎を失っていた。面目を潰された一門は、まだ幼い9歳の清十郎の嫡男・ 又七郎との決闘を仕込み、一門全員で武蔵を襲う計略を練る。一門100人に加え、金で雇った他流派300人が決闘場のまわりに身を潜めていたが、突如現れた武蔵が襲いかかり、武蔵1人対吉岡一門400人の死闘が始まる。
アクション映画『RE:BORN』で主演を務め、常に日本のアクションシーンを牽引し続ける坂口拓が9年前に撮影し、日の目を見ぬまま眠っていた幻の侍映画がついに公開を迎えた。メガホンを取ったのは、『GANTZ』『キングダム』シリーズのアクション監督を務めた下村勇ニ。9年前に77分ワンシーン・ワンカットで撮影されたシーンでは、坂口がたった独りで400人の相手を斬り捨てるというアクションに挑んでいる。
坂口が400人(実際は588人)の侍を斬ったこのシーンは、9年前の2011年に撮影されたもの。本来は、アクションマンが実際に役者を狙って刀を振ることは、怪我に繋がる。しかし、坂口は「『相手に対して思いやり、リスペクト、怪我をさせない。』この3つを守れば、僕は映画の中で殺し合いをしてもいいと思っている」と明かしており、1年かけて、「顔や目、喉、頭、体、好きなところを狙って来い」という練習をさせたという。
『キングダム』でも坂口とタッグを組んでいる下村監督は、同作で「彼(坂口)は、本気でかかって来られないと受けないんですよ。スタントマン達には、『彼を殺してもいいから本気でかかれ』と指示を出した」と語っており、坂口と本気でぶつかって作り上げることで、『RE:BORN』『キングダム』『狂武蔵』に共通するアクションシーンに感じた熱の正体を明かしている。
『狂武蔵』の本シーンでは、撮影開始5分で実際に指が折れ、肋骨も折れ、奥歯も砕け、死をも覚悟したという坂口。武蔵としての生き様が、物語の核となる77分の死闘シーンに刻まれている。