劇場版『Fate/stay night』早くもチケット争奪戦が始まる なぜ圧倒的人気を獲得?

 原作の『Fate/stay night』では3つのルートがあり、8月15日に公開される劇場版はその最終章にあたる『Heaven’s Feel』編だ。3部作の3作目にあたり、物語はクライマックスを迎える。英雄になることを求めて、色々な犠牲や自身の身を削るような思いをしながらも進んできた衛宮士郎が、最愛の女性である間桐桜といかに向き合っていくのか、といった点が描かれている。ufotableが制作しており、過去作や予告編を観ると、おそらく世界中のアニメ作品を見比べても、比肩するものがないほどの映像表現を披露してくれるのではないかと、公開前から胸が高鳴る思いがする。

 『Heaven’s Feel』で特に注目したいのが、ヒロインである間桐桜の妖しい魅力だろう。Fateは元々が大人向けPCゲームだったこともあり、セクシーな表現が散見される作品だ。アニメでは男女問わず肌を露出させるような、いわゆるお色気描写というのは多く存在するものの、本作のそれは他を圧倒している。桜の声を務める下屋則子の熱演もあり、単なる萌え表現というには収まらない艶かしさがあるのだ。

 だが、これが決して悪趣味なものではないというのも重要だ。そこには艶や色気があり、例えるならば実写映画のベッドシーンのような味わいがある。そこでは絵で描かれたキャラクターではなく、すでに生身の人物としてこの世に生まれているかのようだ。この妖しい魅力こそが、キャラクターを超えて桜の人間性の表現、あるいはその持って生まれてしまった業によって悩む姿を描き出しており、それはまさしく映画的な印象を与える。

 世界のアニメーションと比較した場合、日本のアニメはやはり特異な点が多く、ガラパゴス的だと指摘されることも多い。特に本作のようなPCゲームから生まれた作品は、時に眉をひそめられることもある。確かに『Fate』シリーズはエログロに満ちた表現も躊躇なく描いている。一方で、その暴力の裏にある個々の思い、物悲しさ、あるいはエロチックな表現の中にある色艶や思い人に対する複雑な感情も描き出し、アニメ表現の幅を大きく広げてきた。

 日本アニメを語る際には、どうしても子どもも楽しめるファミリー向けアニメ映画が注目をされるだろう。本作は子どもが観るには適していない表現も多く、またアニメファン以外にも広く受け入れられる作品とは言いづらいことも事実だ。しかしながら、日本のアニメやオタク文化の光が当たりづらいアングラな魅力を発揮した作品として『Fate/stay night [Heaven’s Feel]』の3部作は、1つの金字塔となるだろう。

■井中カエル
ブロガー・ライター。映画・アニメを中心に論じるブログ「物語る亀」を運営中。
@monogatarukame

■公開情報
劇場版『Fate/stay night [Heaven’s Feel]』III.spring song
8月15日(土)公開
声の出演:杉山紀彰、下屋則子、川澄綾子、植田佳奈、門脇舞以、伊藤美紀、中田譲治、津嘉山正種、浅川悠、稲田徹
キャラクターデザイン:須藤友徳・碇谷敦・田畑壽之
脚本:桧山彬(ufotable)
美術監督:衛藤功二
撮影監督:寺尾優一
3D監督:西脇一樹
色彩設計:松岡美佳
編集:神野学
音楽:梶浦由記
主題歌:Aimer
制作プロデューサー:近藤光
アニメーション制作:ufotable
配給:アニプレックス
(c)TYPE-MOON・ufotable・FSNPC
公式サイト:http://www.fate-sn.com/
公式Twitter:@Fate_SN_Anime

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