実際に難民の少年が主人公役に 『ファヒム パリが⾒た奇跡』厳しい現実を切り取った本編映像
8月14日より公開となる映画『ファヒム パリが⾒た奇跡』より、本編映像が公開された。
本作は、フランスで起きた感動の実話をもとにしたヒューマンドラマ。舞台は、政変が続くバングラデシュ。家族が反政府組織に属していたことに加え、チェスの大会で勝利を重ね続けるファヒムに対する妬みが原因で、徐々にファヒムと家族は脅迫を受けるようになっていた。自分たちの身に危険を感じた父親はまだわずか8歳だった少年・ファヒムを連れ、二人だけでパリへ国外脱出、そこでチェスのトップコーチであるシルヴァンと出会う。独特な指導をするかつての天才チェスプレーヤーでもあるシルヴァンと、天才頭脳で口達者なファヒムはぶつかり合いながらも、チェスのトーナメントを目指して信頼関係を築いていく。
公開された映像では、難⺠申請のための審査⾯接を受けるファヒムの⽗親の姿が。「このままでは望み薄ですよ」と申請の許可を得るためにはもっと効⼒のある書類を揃えることが必要だと伝えられるが、通訳が彼らに伝えたのは「頑張って我々が⼒になります」という全く違う内容。すでに友⼈らからフランス語を教わり、⾔葉が分かるようになっていたファヒムはその事実に気づき驚愕、そのことを⾯接官と⽗親に指摘する。
監督のピエール=フランソワ・マルタン=ラヴァルは「彼らにこの映画を捧げることで、私なりのやり⽅で彼らに対する罪悪感を振り払い、彼らの物語を通して、⺟国で命の危険がある⼈々が⼤半を占める保護の申請者たちの運命を伝えたかったのです」と語るように、世界で起こり続けている難⺠をめぐる厳しい現実の⼀端が垣間⾒えるシーンとなっている。
ファヒムを演じたのは、これが演技初挑戦であり、彼⾃⾝も撮影が始まる約3カ⽉前にバングラデシュから政治亡命者の息⼦として逃れてきたという役柄と似た境遇にあるアサド・アーメッド。ある⽇突然⽗親から「いとこと⼀緒にでかけろ」と⾔われた先が映画のキャスティング現場だったという。本作について「脚本の内容を聞いた時、とても感動しましたし、バングラデシュの⾸都ダッカで起こっているいろいろな問題を思い出しました。ファヒムの物語は僕のものではありません。でも僕が経験してもおかしくなかった」「この映画を通して、⼈々が移⺠の⽣活が簡単ではないと分かってくれることを願います」とその想いを語っている。
ファヒムをフランス王者にするために熱⼼な指導に没頭するチェスコーチ・シルヴァンを演じるのは、フランスの誇るジェラール・ドパルデュー。監督が実際の“ファヒム”の指導者であるグザヴィエ・パルマンティエに出会った際に「彼の恰幅の良さ、優しさ、激しい気性を知りまっさきに思い浮かべたのがジェラール・ドパルデューだった」という。「私はおめでたい⼈間ですから、すぐにジェラールがぴったりだと思い、1秒たりとも断られる可能性を想像しませんでした。それでもジェラールのエージェントに脚本を送った時は多少ドキドキしましたよ。脚本は140ページあり、この⻑さがジェラールのやる気をそぐんじゃないかと怖くなったのです。でも違いました。48時間後に彼はOKの連絡をくれました」とその喜びを語る。
監督は、本作を製作することになったきっかけについて、「2014年2⽉、テレビで14歳のバングラデシュ⼈の少年が、彼のこれまでの⼈⽣を語った本『Un roi clandestin(密⼊国者の王さま)』<⽇本未発売>についてインタビューを受けていたのを⾒たのです。それまで彼のことをまったく知りませんでしたが、落ち着いた声で話すこの少年に魅了され⼼を揺さぶられたのです。なぜ8歳の時に急に⺟親から引き離され、国を出なければならなかったのか。⽗親と⼀緒に⾔葉も⽣活習慣も知らないフランスに降り⽴ち、その4年後に、不法滞在のホームレスであったにもかかわらず、どうやって12歳以下のチェスのフランス王者になったのか。すごい道のりです! 私の映画作家としての⾎が体をひと巡りし、すぐにこの映画を作りたいと思ったのです」と述べている。
■公開情報
『ファヒム パリが見た奇跡』
8月14日(金)ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国公開
監督:ピエール=フランソワ・マルタン=ラヴァル
出演:ジェラール・ドパルデュー、アサド・アーメッド、ミザヌル・ラハマン、イザベル・ナンティ
後援:在日フランス大使館、アンスティチュ・フランセ日本、ユニフランス
提供:東京テアトル、東北新社
配給:東京テアトル/STAR CHANNEL MOVIES
原題:Fahim/2019年/仏/107分/5.1ch/シネマスコープ/カラー/デジタル
(c)POLO-EDDY BRIERE.