『リモートで殺される』は『あなたの番です』に続く? 中田秀夫×秋元康のタッグが生む恐怖を予想
とりわけ中田秀夫監督の作品といえば前述した2作品のようにその時代を象徴したツールを用いた時に驚異的な威力を発揮するのは言うまでもない。昨年公開された『貞子』でも動画配信サイトを恐怖の題材に選び、いわゆるホラーの文脈に則った恐怖と、サスペンスの文脈に則った恐怖の両面を巧みに往来させる。今回は“リモート”画面を使った恐怖を描くわけだが、予告映像を見る限りはそれぞれの部屋のシーンや高校時代の回想シーンも織り交ぜられていくようなスタイルが予想でき、どちらかといえばサスペンス寄りの恐怖を思わせるものがある。もちろんリモート画面と通常撮影による画面との使い分けがひとつのカギとなるのであろうが、そこにある種の“謎解き”的要素が加味されれば、まさに『あなたの番です』のような視聴者体験型の推理ドラマとして成立するはずだ。
また、共有した“秘密”をきっかけにした恐怖体験というプロットの枠組み自体は、90年代に流行したアメリカの青春ホラー作品『ラストサマー』以降幾度となく使われてきたものであるが、近年ではすっかり日本の青春ミステリーにも定着しつつある。見せ方や語り口ひとつで、ミステリーからホラー、ひいてはシンプルな青春ドラマまで、あらゆるテイストに変容させることができるメリットを有しており、例えば『暗黒少女』では集まった登場人物たちの弱みや人間性までもが露わになる、ある種サイコサスペンス的な空気にまで広がりを見せた。他にも昨年人気を集めたテレビドラマ『3年A組 ―今から皆さんは、人質です―』(日本テレビ系)も類似したプロット枠を持っている作品として挙げられるだろう。
そして最大のポイントは、常に画面に映り続ける少ない登場人物たちの些細な表情の変化や仕草などが、物語を読み解くカギになるということだ。リモートで会話を繰り広げる6人は、本田と新田、前田、柄本、そして前野朋哉に早乙女太一。特殊な画面の中だからこそ、彼らの演技が極めて重要なものとなることは間違いない。とくに動きの激しいアクション作品で魅力を発揮してきた早乙女が、この限られたフレームの中でどんな演技を見せてくれるのかは注目しておきたいところだ。
■久保田和馬
1989年生まれ。映画ライター/評論・研究。好きな映画監督はアラン・レネ、ロベール・ブレッソンなど。Twitter
■放送情報
スペシャルドラマ『リモートで殺される』
日本テレビ系にて、7月26日(日)22:30〜23:25放送
出演:本田翼、新田真剣佑、柄本時生、早乙女太一、前野朋哉、齋藤飛鳥、前田敦子
企画 ・原案:秋元康
脚本:元麻布ファクトリー
監督:中田秀夫
音楽:川井憲次
チーププロデューサー:福士睦
プロデューサー:植野浩之、畠山直人、森田美桜(AOI Pro.)
制作協力:AOI Pro.
製作著作:日本テレビ
(c)日本テレビ
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