『MIU404』は回を重ねるごとに面白さが加速 野木亜紀子が突きつける“弱者たちの叫び”

『MIU404』回を重ねるごとに面白さが加速

 この世界はままならないことで溢れている。一度足を踏み外したら最後、修正が効かない。第3話におけるデジタルタトゥーによって社会的制裁を必要以上に受けてしまう高校生たちや、第4話における「手取り14万」というフレーズなど、『MIU404』(TBS系)はこれでもかと言うほど閉塞感に満ちた現代社会を映し出す。何を訴えても「自己責任」と言い捨てられるこの世界で、星野源演じる志摩と、綾野剛演じる伊吹の2人は、「ルーブ・ゴールドバーグ・マシン(ピタゴラ装置)」から外れ、今にも零れ落ちそうな球を懸命にキャッチして、元の道に戻そうとしているかのようだ。

 『MIU404』は第3話における菅田将暉の登場というサプライズも含め、面白さがどんどん加速している。

 第3話は、陸上部という居場所を理不尽に奪われ、いたずら通報をして警察から逃げ切ったら勝ちという無益なゲームを繰り返す高校生たちの話だ。山田杏奈から頬にキスされて照れる前田旺志郎の姿からして、瑞々しい青春ドラマのような第3話は、少年たちがひたすら走る物語であると同時に、“落ちる”物語でもある。

 志摩が例え話に使った即席のピタゴラ装置から零れ落ちた球は、4機捜メンバー含めた大人たち中心に高校生たちを混ぜた2度目の円陣に1人だけ入れず、結果的に疎外されてしまった少年・成川(鈴鹿央士)が落ちていくさまを不吉に暗示する。落ちた先にいたのは、菅田演じる傘をさした赤い服の男だった。

 最初のショットも奇妙なものである。山田杏奈演じる女子高生が虚偽の通報をする電話ボックスは、画面が横向きになっているために、“嘘”であることを示しているともとれるが、終盤彼女を守るため犯人と格闘する志摩と伊吹が落ちる水槽のようにも見える。ある意味志摩と伊吹は、道を外れ、今にも落ちそうな少年少女たちの代わりとして、颯爽と落ちた。刑事ドラマ的にはいかにもバディものの醍醐味といった形で、賑やかに騒ぎ、慌てふためきながら。

 “落ちる”と言えば、第4話のヒロイン・美村里江演じる哀しきヒロイン・青池透子もまた、彼女が洗うカジノのチップがカップの底のほうに沈む描写のように、“落ちた”のだった。一度道を踏み外したが、もう一人の「ミリオンダラーガール」羽野麦(黒川智花)に救われることで軌道修正されたはずだった。だが、思わぬ社会の落とし穴に再び落ち、後戻りができない道をひた走っている。『アンナチュラル』(TBS系)第2話の名もなき御遺体「ミケちゃん」や、『コタキ兄弟と四苦八苦』(テレビ東京系)第1話において血を流しながら兄弟の元に現れた市川実日子演じる依頼主など、あらゆる野木亜紀子作品の戦う女性たちを思い起こさせる存在である。

 伊吹は防犯カメラ越しに青池の目を見つめ、青池は看板越しに、異国の名もなき少女の目を見つめる。それぞれにまだ会ったことのない誰かと話したい、救いたいと願う2人の全力の追いかけっこ。伊吹は彼女の全力疾走に間に合わず、彼女の遺体と向き合うことになる。だがそれは、悲劇に見せかけた、彼女にとっての勝利だった。

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