『探偵・由利麟太郎』が他の刑事ものと一線を画したワケ ドラマを成立させた吉川晃司の存在感

他の刑事ものと一線を画した『由利麟太郎』

 これだけの浮世離れした要素をギュッと1話に詰め込んでも散らからずに成立していたのは、他でもない誰よりも世間離れした由利麟太郎を演じる吉川晃司の存在のおかげだろう。

 グレイヘアの渋い風貌、180cmを超える長身にタイトな外套を着こなす抜群のスタイル。それ以上に、人を惹きつけて離さないカリスマ性は、長らくロック歌手として芸能界の最前線に立ち続けてきたからこその賜物。彼だけが持ち合わせる独特の空気感と間合いである。本作内でも、全く声を張っていない由利だが、彼が静かに話始めるとどうしても自然と耳を傾けてしまっている。これまでも多くを語らずとも、背中で見せるようなリーダータイプを演じてきた吉川。2009年放送の大河ドラマ『天地人』(NHK総合)では織田信長役を好演し話題に。また記憶に新しいのは『下町ロケット』(TBS系)で演じた財前部長。難航を極めるロケット開発部の部長を務め、自身の進退をかけて信念を貫き通す姿に、視聴者からも「憧れの上司像」だという声が上がっていた。

 いるだけでその場の空気が“立つ”ような圧倒的存在感を持ちながらも、共演者の若手俳優陣の存在も決して殺してしまわない。志尊淳とのバディも意外性がありつつも安定感も感じられ、相性良好だった。大きなクライマックスがあるわけでもなく、余韻を残しながらそっと静かに幕引きされた最終話もとても風情があり、本作らしいエンディングを飾った。

■楳田 佳香
元出版社勤務。現在都内OL時々ライター業。三度の飯より映画・ドラマが好きで劇場鑑賞映画本数は年間約100本。Twitter

■放送情報
『探偵・由利麟太郎』
カンテレ・フジテレビ系にて、毎週火曜21:00~21:54放送
原作:横溝正史『由利麟太郎シリーズ』(角川文庫刊、柏書房刊)
出演:吉川晃司、志尊淳、木本武宏、どんぐり、田辺誠一
ゲスト出演:新川優愛、水上京香、村川絵梨、浅利陽介、高岡早紀、大鶴義丹、鈴木一真、吉谷彩子、佐野岳、板尾創路ほか
脚本:小林弘利
演出・プロデュース:木村弥寿彦(カンテレ)
プロデューサー:萩原崇(カンテレ)、森井敦(東映京都撮影所)、福島一貴(東映京都撮影所)
メインテーマ・エンディングテーマ:吉川晃司 
メインテーマ:「Brave Arrow」
エンディングテーマ:「焚き火」
発売元:ワーナーミュージック・ジャパン
音楽:ワンミュージック
制作協力:東映京都撮影所
制作著作:カンテレ
(c)カンテレ

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