堀田真由、望月歩、佐久本宝、森七菜 『エール』の要所を担っていた『3年A組』俳優たち

『エール』の要所に『3年A組』俳優あり

佐久本宝(古山浩二役)

 第11週における、裏の主人公とも言えるのが浩二だ。先述した第14話にて、裕一がいなくなり肩を落とした三郎を見て、「僕が行ってたらたぶん、あそこまではなんねえだろうな」と嫌味を残していくが、この気持ちが徐々に膨れ上がり、やがて爆発するのが裕一が東京行きを決め家を出て行こうとする場面だ。

 家族の思いも知らず、自身の感情の赴くままに突き進んでいく身勝手な裕一に「周りの愛を当たり前だと思うなよ!」「これまでずっと我慢してきたけど、俺、兄さんが嫌いだ」と浩二は積年の恨みをぶちまける。それは劣等感、焦燥感が生んだ愛憎の念。何度観ても息を呑む、緊迫したこの場面は、『エール』切っての名シーンに数えられるだろう。

 そして、第11週ではそんな裕一と浩二の蟠りが三郎の遺言によってゆっくりと解けていく。東京へと帰る裕一らを気恥ずかしそうに見送る浩二。しんしんと降り出す雪に、かつてのスノードームを思い出したのか、浩二は裕一に向け「俺、りんごやんだ。うまいの出来たら送るよ」と新たな一歩を踏み出すこと、これから家族としての付き合いをしていくことを伝える。これから夫に先立たれた妻・まさ(菊池桃子)を支えるのは、浩二の役目。つらく重苦しい場面が多かった彼に、後半パートではささやかな幸せが降り注ぐことを願うばかりだ。

森七菜(関内音役)

 再放送では来週の第4週「君はるか」で初登場となるのが、梅を演じる森七菜。音の子供時代を任された清水香帆と二階堂ふみが瓜二つと話題に上がったが、梅の幼少期の新津ちせと森七菜も本当の姉妹のようにそっくりだ(公式サイトのインタビューで森が新海誠とのエピソードを交え触れているほど)。

 文学好きで現実主義者な梅は、長女の吟(松井玲奈)と音とは違った、達観した視点を持ち合わせている。ズバッとものを言う、末っ子だ。梅は亡くなった父・安隆(光石研)に捧げる詩を、演奏会で披露するからと音に頼まれる。未来のお義兄さん・裕一からのアドバイスもあり、梅は初めて作品を最後まで書ききることに成功。演奏会当日、ステージにいる裕一から紹介された梅はニンマリと達成感に浸る。

 安隆が現世に帰ってくる第12週では、白装束の亡き父の姿にも一切動じない梅。「幽霊なんて文学じゃありふれてるよ」と冷静だ。小説家を目指す上で壁にぶちあたっている梅は「負けを受け入れるから人は成長したり違うことに挑戦できるんだ」という安隆の言葉を胸に、「これからはまっすぐ生きてみる。自分とか小説まっすぐ表現してみる」と笑顔で父に抱きつく。

 本放送再開後の第14週は梅がメイン。第13週のラストに出てきた田ノ上五郎(岡部大)との恋路にも注目だ。

 『エール』は現在、異例の再放送期間を迎えているが、必ず本放送再開の時はやってくる。期待されるのは折り返し以後の、後半パートのキャスト。ここまで紹介してきた以外のさらなる『3年A組』出演者陣が発表されるかもしれない。注目が集まるのは、朝ドラ恒例とも言える音の娘・華の成長した姿を誰が演じるのかということ。そんな重要な役柄の発表も楽しみにしながら、本放送の再開を心待ちにしている。

■渡辺彰浩
1988年生まれ。ライター/編集。2017年1月より、リアルサウンド編集部を経て独立。パンが好き。Twitter

■放送情報
連続テレビ小説『エール』
2020年3月30日(月)〜9月26日(土)予定
※6月29日より第1回から再放送中
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45、(再放送)11:00〜11:15
※土曜は1週間を振り返り
出演:窪田正孝、二階堂ふみ、薬師丸ひろ子、菊池桃子、光石研、中村蒼、山崎育三郎、森山直太朗、佐久本宝、松井玲奈、森七菜、柴咲コウ、風間杜夫、唐沢寿明ほか
制作統括:土屋勝裕
プロデューサー:小西千栄子、小林泰子、土居美希
演出:吉田照幸、松園武大ほか
写真提供=NHK
公式サイト:https://www.nhk.or.jp/yell/

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