『エール』の魅力は多種多様なキャストの妙演にあり!? 朝ドラ近作の傾向から探る

朝ドラ近作に見る『エール』キャストの多さ

 『まんぷく』で萬平(長谷川博己)が脱税の嫌疑をかけられ3度目の逮捕の憂き目にあう12週までは、14人の「塩軍団」を含めてもレギュラーキャストは31人。ゲストキャストは6人だった。

 続く朝ドラ100作目の『なつぞら』。生き別れになった妹・千遥を探すも見つからず「いつか千遥に見てもらうために」となつ(広瀬すず)がアニメ作りへの思いを新たにする12週までの出演者は、レギュラーキャストが48人、ゲストキャストが5人だった。

 ひとつ前の作品『スカーレット』では、喜美子(戸田恵梨香)と八郎(松下洸平)が結婚し新たな家族を作る12週までのレギュラーキャストは27人、ゲストキャストは6人だった。

 そして『エール』。3つのスピンオフが展開する12週「アナザーストーリー」までの出演者は、レギュラーキャストが31人、ゲストキャストが25人と、やはり東京制作の朝ドラはキャストが多いことがわかる。

 半年間という長い放送期間の朝ドラは、いかに視聴者を飽きさせないかが肝要。近年の東京制作の朝ドラは、大人数の華やかなキャストと万華鏡のように場面が変わるレビューショー的エンタメ要素が魅力のひとつと言って間違いないだろう。こうした「東京スタイル」は、朝ドラを初めて見る視聴者や小さな子ども、そして初回から見られず途中参加の視聴者にも「なんか賑やかで楽しそうだぞ」という親しみやすさと、すぐにその世界観に入り込める「とっつきやすさ」を与えているのではないだろうか。「次はどんな新キャストがくるのか」というワクワク感、朝ドラだからこそ実現できる、大勢で盛り上げる「お祭り感」も一興だ。

 「長いご贔屓のお客さんを大切にすること」と「新たな顧客の開拓」はどちらも大切で、とりわけ東京制作の朝ドラは後者において大きく貢献しているように思える。100作の節目を経て、今後ますます新たな進化を遂げていくであろう朝ドラ。東京制作の作品のセールスポイントである「多種多様なキャストの妙演」に着目してみるのも、『エール』を楽しむツボと言えるかもしれない。

■野田一
主にドラマ・映画・昭和カルチャーなどについて書いているライター。朝ドラ最古の記憶は『雲のじゅうたん』。

■放送情報
連続テレビ小説『エール』
2020年3月30日(月)~9月26日(土)予定
総合:午前8:00~8:15、(再放送)12:45~13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30~7:45、(再放送)11:00~11:15
※土曜は1週間を振り返り
出演:窪田正孝、二階堂ふみ、薬師丸ひろ子、菊池桃子、光石研、中村蒼、山崎育三郎、森山直太朗、佐久本宝、松井玲奈、森七菜、柴咲コウ、風間杜夫、唐沢寿明ほか
制作統括:土屋勝裕
プロデューサー:小西千栄子、小林泰子、土居美希
演出:吉田照幸、松園武大ほか
写真提供=NHK
公式サイト:https://www.nhk.or.jp/yell/

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