相次ぐ大幅公開延期 その背景にある「満席にできないジレンマ」

映画館営業再開も「満席にできないジレンマ」

 先週の週末動員ランキング。劇場は営業再開したものの、まだまだ新型コロナウイルスの動員への影響が続く中、2位にジム・ジャームッシュ監督『デッド・ドント・ダイ』、5位にリュック・ベッソン監督『ANNA/アナ』と、いずれも80年代から長いこと日本でもファンベースを築いてきた監督の新作が初登場しているのは公開タイミングのせいとはいえなかなか感慨深い。思わず「映画を救うのは一般層ではなく中年以上の映画ファンだ」なんてことを言いたくもなってくるが、興行通信社はまだ興行収入の発表を控えたまま。自分も先週劇場に足を運ぶ機会があったのだが、客入りの寂しさに少なからずショックを受けた。映画興行の本格的な復活はまだまだ遠い。

 そんな中、今週に入っていくつかの注目すべき「公開延期」の発表があった。一つは、当コラムでも再三取り上げてきた『名探偵コナン 緋色の弾丸』。当初の公開予定日だった2020年4月17日から、丸一年後となる2021年4月の公開になることが決定した。メジャー配給による日本映画のシリーズ作品は、そのほとんどが年間スケジュールの中で公開時期が固定されているため、今回のような「緊急事態」が発生した場合、数ヶ月の延期では収まらない作品が出てくるであろうことは以前から指摘してきたが、1997年から休むことなく毎年製作されてきた『名探偵コナン』シリーズは、これで2年開くことになる。今や日本映画界屈指のヒットシリーズとなった同作が1本丸ごと年間興収から消滅することの経済損失は、言うまでもなく甚大だ。

 大幅な「公開延期」となったのは、何も『名探偵コナン』のようなブロックバスター作品だけではない。既に各メディアにおける精力的なプロモーションも始まっていて、前評判もすこぶる高かった(自分も新型コロナウイルス感染拡大前に試写で観ましたが素晴らしい作品でした)、今泉力哉監督の新作『街の上で』は、当初の公開予定日だった2020年5月1日から、2021年春の公開になることが決定した。自分が注目したのは、公開延期の告知に寄せた今泉監督の文章の次の一文だ。「まだまだ先の見えない状況ではありますが、やはり満席の劇場が似合う作品だと思ってます」。

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