相次ぐ大幅公開延期 その背景にある「満席にできないジレンマ」

映画館営業再開も「満席にできないジレンマ」

 映画館の営業は再開できるようになった。しかし、ウイルス対策のために劇場はまだ満席にできない。そのジレンマの中で、今、多くの作品が困難な判断を強いられている。もっと言うなら、経営体力のある大手シネコンならともかく、(自分も以前働いていたのでよくわかるが)『街の上で』が上映されるような多くのインディペンデント系の劇場やミニシアターは、年に何作か生まれる人気作の満員興行による利益で、経営を回してきたのが実情だ。劇場側にとっては、本来は満席になるはずの作品でも満席にできない。作り手にとっては、作品の興行的なポテンシャルが損なわれる。観客にとっては、ウイルスへの予防意識だけでなく、客席制限によってチケットが売り切れかもと疑心暗鬼になって劇場から足が遠のく。この悪循環をどこかで断ち切らなくてはいけない。

 アメリカの主要都市でも、大手シネコンの各チェーンは7月に入ってから客席を25%(前後左右を空席にする)にして営業を再開していく見込みだという。毎日各都市で何万人もの人々がBlack Lives Matterのデモで密集しながらも、その街の映画館は開いていない現在の状態を報道で追っていると、ちょっと不思議な気持ちにもなってしまう。

■宇野維正
映画・音楽ジャーナリスト。「装苑」「GLOW」「キネマ旬報」「メルカリマガジン」などで批評やコラムを連載中。著書『1998年の宇多田ヒカル』(新潮社)、『くるりのこと』(新潮社)、『小沢健二の帰還』(岩波書店)、『日本代表とMr.Children』(ソル・メディア)。最新刊『2010s』(新潮社)発売中。Twitter

■公開情報
『街の上で』
2021年春公開
出演:若葉竜也、穂志もえか、古川琴音、萩原みのり、中田青渚、成田凌(友情出演)ほか
監督:今泉力哉
脚本:今泉力哉 、大橋裕之
音楽:入江陽
主題歌:ラッキーオールドサン「街の人」(NEW FOLK / Mastard Records)
配給:『街の上で』フィルムパートナーズ
配給協力:SPOTTED PRODUCTIONS
(c)『街の上で』フィルムパートナーズ
公式サイト:https://machinouede.com/
公式Twitter:https://twitter.com/machinouede
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