『未来少年コナン』を再放送の今こそ観よう 散りばめられた宮崎駿作品のエッセンス

『未来少年コナン』は再放送の今こそ観るべき

キャラクターたちの果てしない魅力

 物語だけでなく、個性豊かなキャラクターたちも本作の大きな魅力だ。恐れを知らぬ野生児のコナンは『天空の城ラピュタ』のパズーに代表される、勇敢な少年の原点と言えるし、健気で勇敢なヒロイン、ラナもその後の宮崎作品に度々登場する、意志の強いヒロイン像を連想させる。

 日本アニメを研究するスーザン・ネイピアは自著『ミヤザキワールド 宮崎駿の闇と光』にて、本作について「キャラクターたちは画面から飛び出してきそうなほどの躍動感に溢れて」いると語り、ヒロインのラナについては「しとやかでありながら意志が強く、勇敢であると同時に愛情深い」存在で、後の宮崎作品に登場するヒロインの「真の祖先」と記している。

 さらに特筆すべきキャラクターは、最初はコナンたちの敵として登場するモンスリーだ。『風の谷のナウシカ』のクシャナや『もののけ姫』のエボシ御前に連なる、理知的で冷徹さと慈悲深さを併せ持った女性指揮官だが、宮崎アニメを特徴づけるキャラクターと言ってよいだろう。彼女の存在が単純な勧善懲悪で分断しない、人間模様の奥深さを本作に与えている。

 その他、コナンの相棒となるジムシーや、ダイス船長などのコミカルなキャラクターたちの活躍も見逃せない。本作の文明崩壊後の絶望的世界を過剰に不安に陥らずに観ていられるのも、これらのキャラクターたちの配置の絶妙さに負うところも大きいだろう。

 そして、本作において悪を担うのは、独りよがりな独裁者レプカだ。『カリオストロの城』のカリオストロ伯爵や、『天空の城ラピュタ』のムスカを彷彿とさせるキャラクターで、倒されるべき悪を体現してカタルシスの創出に大きく貢献している。

 破壊と再生のカタルシスと血湧き肉躍る冒険活劇の魅力に溢れた物語、躍動感ある画面作りに支えられ、絶望の世界を生き抜く人々の強さを高らかに謳い上げた傑作である。宮崎映画は何度もテレビ放送されるが、本作はTVシリーズであるためか、視聴機会は限られる。ぜひともこの機会を見逃さないようにしてほしい。

■杉本穂高
神奈川県厚木市のミニシアター「アミューあつぎ映画.comシネマ」の元支配人。ブログ:「Film Goes With Net」書いてます。他ハフィントン・ポストなどでも映画評を執筆中。

■放送情報
『未来少年コナン』
NHK総合にて、毎週日曜深夜0:10~0:40放送
原作:アレグサンダー・ケイ『残された人びと』より
脚本:中野顕彰、吉川惣司、胡桃哲
音楽:池辺晋一郎
作画監督:大塚康生
演出:宮崎駿
アニメーション制作:日本アニメーション
(c)NIPPON ANIMATION CO.,LTD.

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