『未来少年コナン』を再放送の今こそ観よう 散りばめられた宮崎駿作品のエッセンス

『未来少年コナン』は再放送の今こそ観るべき

宮崎駿の創作の原点「破壊と再生」

 本作は、人類の愚かな戦争によって地球環境が破壊された後、再び再生してゆく物語と言える。自然の再生力への信頼と人類の文明の破壊力への失望がありありと見て取れる作品であるが、「破壊と再生」は宮崎駿の創作の源と言える。

 本作で作画監督を務めた大塚康生氏も自著『作画汗まみれ』で氏の創作の原点は「破壊と再生のエネルギー」と語っているが、本作はその最初の実践でもあっただろう。

 宮崎氏の作品は、破壊の享楽と再生の希望的カタルシスがともに描かれることに特徴がある。例えば、『風の谷のナウシカ』の巨神兵による薙ぎ払いのシーンの迫力と恐怖のカタルシスの後に、ナウシカがオウムに導かれ「青き衣の者」として再生し、自然が再生してゆくことが示唆される。本作もまたその2つの相反するカタルシスの連続が描かれる。

 地震や津波の破壊による混沌、ハイハーバーを占拠しようと目論んだインダストリアルとの戦闘による破壊から敵対していた人々が一緒に麦作りに精を出し、新しい共同体が生まれること、終盤の最終兵器ギガントの一戦の後に訪れる大円団。全26話で何度もこの破壊と再生のカタルシスの波を繰り返して物語は前に進んでゆく。起伏が大きくドラマチックな展開の連続で飽きさせることがない。デビュー作において、その後の作品でも発揮される2つの相反するカタルシスを自在に操る話法が極めて高いレベルで完成しているのだ。

 演出面でも破壊と再生のカタルシスは見て取れる。ロケットの残骸をベースに建てられた、のこされ島の家とおじいを失った後、コナンはやりきれない思いを発散するために岩を持ち上げては破壊する。悲しみと怒り、喪失感や悔しさなど様々な感情が入り混じった複雑なシーンを、強烈にデフォルメした絵と動きだけで表現してみせる。

 破壊から再生は、宮崎氏の創作姿勢にも現れている。本作は原作小説の内容とは大きくことなり、宮崎氏による原作の破壊と再生が行われていると言ってよい。世界観の設定を借り受けているものの、キャラクター設定などは完全に別もので独自の宮崎ワールドに染め上げているのだ。

 大塚氏は上述の自著で、宮崎氏は自身のオリジナル作品の『風の谷のナウシカ』や『もののけ姫』ですら原作とは異なるものに作り変えて映像化していることを指摘し、「攻撃的に破壊、再生を加えるのが宮崎さんの創作の原点にあるのではないでしょうか」と記している。

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