『麒麟がくる』長谷川博己に訪れた3つの別れ 「無念じゃ!」と叫ぶ光秀の行方は?

『麒麟がくる』長谷川博己に訪れた別れ

 道三(本木雅弘)の鬼気迫る最期が描かれた『麒麟がくる』(NHK総合)の第17回。美濃国を分かつ長良川の戦いは前半戦最大のクライマックスとなり、黒衣を纏う道三と、甲冑の高政(伊藤英明)が槍を用いて戦う様子が描かれる。父子の最後の戦いはあまりに非情な終焉を迎えた。

 第17回では光秀(長谷川博己)にとって3つの別れが描かれる。その最たるものが道三との別れだ。

 道三と高政との一騎打ちで、道三はしきりに「父の名を申せ」と高政を詰める。しかし、高政は最後まで頑として実の父親が道三だと口に出さなかった。それどころか、高政は殺すつもりのなかった道三を「討て!」と重臣たちに命じる。道三は夢中で槍を振りかぶり高政に向かって行ったが、途中で切られてしまう。グッとつり上がった眉で高政を威圧する道三の威厳から、徐々に眉は下がり、やっとの思いで高政の元へと辿り着くと、「我が子、高政、愚か者。勝ったのは、道三じゃ」と呟きながら力尽きる。この鬼気迫る憤怒の表情から別人のように力を弱めていく様子を、本木は表情、仕草の全てで熱演した。このシーンは『麒麟がくる』にとって、忘れてはならない名シーンとなっただろう。

 道三にとってこの戦いは、運よく勝てば自身が返り咲ける、高政が道三を討っても“親殺し”の汚名を着せられる、まさにマムシの道三さながらの狡猾な戦術であった。しかし、それと同時に、父が子に本音で向き合う最後の瞬間でもある。高政の元に倒れ込んだ道三は、奇しくも親子の抱擁を交わしているように見えた。目に涙を溜める高政。最後までわかり合うことのできなかった悲しい親子の姿が印象的に描かれた。

 そこに光秀が登場する。ここで光秀は道三がすでに討たれてしまったことを知る。そして敵となった高政と対峙するのだった。光秀は高政に真の気持ちを聞きたいと前置きし、実の父親は道三ではなかったのかと問う。高政は「ワシの父親は、土岐頼芸(尾美としのり)様」と高らかに答えた。この言葉こそが光秀と高政の決別を決定づけてしまった。光秀は高政に、「(道三は)己への誇りがおありであった」と伝え、さらに「土岐様にもお主にもないものだ」と罵る。高政は光秀に「次会うたときは、そなたの首をはねる。明智城は即刻攻め落とす」と宣戦布告して2人は別れる。高政がその場で首をはねなかったことは、光秀をまだ大切に思う気持ちが残っていたことが伺えた。光秀に逃げる猶予を与えたのだった。これが光秀にとって2度目の別れとなる。

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