「これが信長?」から一転、賞賛の声続出 染谷将太が『麒麟がくる』で見せた“演技力の高さ”
現在放送中のNHKの大河ドラマ『麒麟がくる』で織田信長役を演じている俳優・染谷将太。キャストが発表されたとき、染谷が織田信長役を演じることに「これまでの信長のイメージと違う」と感じた人は多かったのではないだろうか。一方で、過去のイメージを大きく覆す新たな信長像を提示してくれるのでは……と期待する声も多数聞かれた。蓋をあけてみれば、染谷の演技に感嘆する人が続出し、改めて“演技力の高さ”がクローズアップされた。
いわゆる織田信長のパブリックイメージというのはどういったものなのだろうか。まずは2000年以降、大河ドラマで織田信長を演じた俳優を列記したい。『おんな城主直虎』(2017年)=市川海老蔵、『真田丸』(2016年)=吉田鋼太郎、『軍師官兵衛』(2014年)=江口洋介、『江 ~姫たちの戦国~』(2011年)=豊川悦司、『天地人』(2009年)=吉川晃司、『風林火山』(2007年)=佐久間二郎、『功名が辻』(2006年)=舘ひろし、『利家とまつ~加賀百万石物語~』(2002年)=反町隆史。
それぞれ、描かれた年齢やスポットの当たり方で、信長像も変わってくるが、演じた人物を見ていると、体格が良く男性的という印象が強い。織田信長というのは、やはり“強く男臭い”というのが大方のイメージだ。だからこそ、染谷信長にはピンと来なかった人も多かったのだろう。
染谷は現在27歳。『利家とまつ~加賀百万石物語~』で反町が当時29歳で信長を演じていたが、それと比較しても“力強さ”や“男臭さ”はあまり感じられず、最初の登場シーンとなった第7回「帰蝶の願い」では、あどけなさが残る青年が、朝焼けを背景に海から帰ってくるシーンで「これが信長?」という印象だった。この時点で多くの視聴者は「今回の信長像はこれまでと違う」という印象を強く植え付けられただろう。それを良しとするかどうかは、人それぞれだが、作り手の意図が大いに感じられ、今後の染谷の芝居への期待に胸が膨らんだ。
続く第9回「信長の失敗」では、序盤に帰蝶(川口春奈)と対面するシーンが描かれ「村の者と同じ心を持つこと」の大切さを説き、人懐っこさと純朴さを見せたが、その後の父・信秀(高橋克典)、母・土田御前(檀れい)の前で、父に喜んでもらいたいという一心で、今川義元(片岡愛之助)側についた竹千代(のちの徳川家康)の父・松平広忠(浅利陽介)の首を差し出すも、信秀からは「愚か者」と叱責。下唇を震わせながら、無念さと怒りの感情を露わにし、いままで柔らかい印象が強かった信長の内面にある激しい感情との二面性を表現した。