『スカーレット』武志の“日常”を体現する存在 真奈役の松田るかって何者?
ストレートに思いを表現する真奈とは反対に、武志はおそろしいほどに鈍感。そんな2人による駆け引きにならないやり取りも見ていてほほえましかった。両親に似たのか、なかなか進展しない関係に変化が見られたのは、皮肉にも武志の病気がきっかけだった。
病気のことを知らない真奈は、意を決して武志の部屋でたこ焼きパーティをすることを提案。自称「たこ焼き日本一」の真奈による「タコがおぼれてる」衝撃的なビジュアルを目にして、一瞬、武志の頭からは病気のことが吹き飛んだに違いない。次世代展に落選してやけ酒を食らう武志を介抱した際には、ドキリとする場面もあったが、病気の事実を共有することでさらに思いは深まった。
真奈は武志にとっての「日常」を体現する存在だ。第138話で、武志は「今日が君の1日なら、君といつもと変わらない1日を過ごすだろう」と本に書いた。ストレートに思いを伝える真奈は、ありふれた日々を積み重ねた先にある武志の「未来」でもある。マスクをしたまま「逢いたかった」と筆談で伝え、手を握る武志と真奈。2人の間に言葉以上の思いが交わされていた。
松田は「真奈は、病気の人を好きになったわけではなく、好きな人がたまたま病気になっただけ」と公式サイトのインタビューで答えている。まっすぐに自分を見つめる真奈の存在は、限りある時間と向き合いながら、自分の色を探求する武志にとって大きな支えになるだろう。松田自身にとっても、今作はアクションやダンスを封印して臨む女優としての勝負作。最終盤の『スカーレット』でどんな色を見せてくれるだろうか。
■石河コウヘイ
エンタメライター、「じっちゃんの名にかけて」。東京辺境で音楽やドラマについての文章を書いています。ブログ/Twitter
■放送情報
NHK連続テレビ小説『スカーレット』
2019年9月30日(月)〜2020年3月28日(土)放送予定(全150回)
出演:戸田恵梨香、大島優子、林遣都、松下洸平、黒島結菜、伊藤健太郎、福田麻由子、マギー、財前直見、稲垣吾郎ほか
脚本:水橋文美江
制作統括:内田ゆき
プロデューサー:長谷知記、葛西勇也
演出:中島由貴、佐藤譲、鈴木航ほか
写真提供=NHK
公式サイト:https://www.nhk.or.jp/scarlet/